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久々に一人で街に来た。
もうこの格好で歩いても差し障りないとは思うが、一応帽子をかぶって来てしまった。

パチンコに一時間ほど費やした後、そこら辺を意味もなくふらふらとする。

クレープ、スムージー、カフェ、ラーメン屋。
歩けばどんどん食べ物が目に入る。
食欲がないと思っていたが、どれも想像すると美味しそうで、食べたくなる。

しかし案外、それらを目の前にすると急に満腹になってしまう。
不思議だ。


とぼとぼと日中の人が少ない時間帯に、俺は昔日の光を浴びながら訪れていた場所に訪れる。

みんなは今仕事中だろう。

昔もサラリーマンほど規則正しい生活はできていなかったし、むしろ今より不規則だった気がするけど、今よりも日の光を浴びていた気がする。

ダメなんだ。
人間っていうのは日の光を浴びなきゃ。
日の光の下で生きる人間なんだから。

プラプラと歩いていたら、ふと何処かの店でかけている音楽が耳に入ってきた。


「……mel-leck」


音のする方に向いてみれば、そこはCDショップだった。


メルレックは、俺がバンドを解散した時からずっと活動をしているバンドだ。
活動形式は俺達と同じ。

ヴォーカルの銀髪の男は確か、jinと言ったか。
一度だけ話したことがある気がする。

なかなか売れなかった代わりに、今続々とヒットしているメルレック。

俺は誘われるようにCDショップに足を運んだ。