1 久々に一人で街に来た。 もうこの格好で歩いても差し障りないとは思うが、一応帽子をかぶって来てしまった。 パチンコに一時間ほど費やした後、そこら辺を意味もなくふらふらとする。 クレープ、スムージー、カフェ、ラーメン屋。 歩けばどんどん食べ物が目に入る。 食欲がないと思っていたが、どれも想像すると美味しそうで、食べたくなる。 しかし案外、それらを目の前にすると急に満腹になってしまう。 不思議だ。 とぼとぼと日中の人が少ない時間帯に、俺は昔日の光を浴びながら訪れていた場所に訪れる。 みんなは今仕事中だろう。 昔もサラリーマンほど規則正しい生活はできていなかったし、むしろ今より不規則だった気がするけど、今よりも日の光を浴びていた気がする。 ダメなんだ。 人間っていうのは日の光を浴びなきゃ。 日の光の下で生きる人間なんだから。 プラプラと歩いていたら、ふと何処かの店でかけている音楽が耳に入ってきた。 「……mel-leck」 音のする方に向いてみれば、そこはCDショップだった。 メルレックは、俺がバンドを解散した時からずっと活動をしているバンドだ。 活動形式は俺達と同じ。 ヴォーカルの銀髪の男は確か、jinと言ったか。 一度だけ話したことがある気がする。 なかなか売れなかった代わりに、今続々とヒットしているメルレック。 俺は誘われるようにCDショップに足を運んだ。 |