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俺はそのままそこに使えなくなった手ではなく、顔を押し付けた。

ベルトはもういい。
そのままチャックの金具に舌を伸ばして、歯でつまむ。


「隼也」

「俺だって本気なんです……」

「……っ、ちょっと」


そのまま下ろして、記事を歯で引っ張って広げてみる。
するとボクサーパンツが姿を現して、そこに鼻を押し付けたらほんの少しだけ匂いがした。

ジクリ、と下腹部が熱くなって固くなりかける。

ここに、あるんだ。

そう思うと、頭がぼうっとした。

そのまま動かない手は使えないから、腕やら何やらを使ってそのモノまでたどり着く。

ぴったりと収まっているそれを、舌で引っ張りだそうとしてみたり、唇で食んで出そうとして見る。

下手くそだからなかなかうまくいかない。

けれど、ずっと続けていたらそれが出てきた。


「隼也、本当にやめて」


やるのは初めてだ。
でも、やることはわかる。

だからきっとできる。

そう思って柔らかいそれに舌を這わせる。

味はしないし、匂いも薄い気がした。

しばらくどうすればいいのかわからず、舐めたりキスをしたりを繰り返してみたけれど、何も変化はない。

口に含むと聞いたことがある。

俺は持ち得る知識を持って、試行錯誤してみたけれど早川さんが気持ちよさそうにすることは無かったし、ソレも反応を示すことは微々たりともなかった。

あの男にはできて俺にはできない。
その事実を目の当たりにしたような気がして、やっぱり俺には早川さんを虜にする力はないのだと思い知らされている気がして、どうしようもなく切なく虚しくなってくる。

気がつけばポロポロと涙が頬を伝っていた。


「隼也、もうやめて……」

「……絶対あの人と付き合うよりも俺と付き合う方が幸せになれますよ。まだ気持ちよくはできないけど、あの人よりもずっとずっと気持ちよくしてあげる。練習するから。」

「隼也」

「お願い、お願いだよ。遥幸さん、お願いだから、俺にしてよ……」

「そういうことじゃないんだよ隼也。ごめんな、きっとお前にはいい人が現れるよ。俺よりももっと好きになれる人。」


泣きじゃくりながら縋れば、早川さんは乱れた服を整えた後に俺の頭を撫でた。

そしてとんでもなく優しい声でいうから、また息が詰まった。


「……早川さん以外にいない……」


今日はすぐに帰れ。
そう言って、この部屋を出ていく早川さんの後ろ姿に俺はもうかける言葉を見つけられなかった。