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泣きそうで、泣かない。
溢れそうで溢れない。
そんな攻防を自分の中で繰り返す。

早川さんの腕を掴んだまま、俺は一つも引く気を持ち合わせていなかった。
なにか、どうにかして、それを考えるのでいっぱいいっぱいだった。
そして、早川さんの股間を見た時、ひとつ思い出す。



「早川さんは、shinoとセックス……したんですよね。」

「は?」


早川さんが素っ頓狂な声を上げる。
それもそうだろう。
だけど俺は、そんな早川さんに構っている暇はない。


「だってそうでしょ、そういうお店だから……したんですよね。」

「突然なんなの。そりゃ……ね。」

「そんなにshinoは気持ちいいんですか?女よりもいいんですか?」

「……、何が言いたいんだよ」


俺の言葉に反応した早川さんが、声音を曇らせる。
けれど俺は、そんな早川さんの腕をぐいと力強く掴んだ。

もうこれしかない。

そう思っていた。


「ねぇ、俺ともしてくださいよ。……セックス。孕まない体が便利なら俺だっていいじゃないですか。」


何がなんだかわからない。
だけど、もうこれしかないような気がして俺はその場にしゃがみこむと早川さんのベルトに手を掛けた。


「ちょ……っと、隼也っ!」


慌てた早川さんが俺の手を掴む。
けれど俺は、そのまま手を動かす。
ふにゅ、と当たる感触。


「男がいけるなら俺だっていいでしょ。あの人みたいに歌はうまくないけど、金だってあるし、顔だってそんなに悪くない自信があるよ」

「……隼也、やめろ」

「やめない……っ」