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「どうして。」


早川さんの冷めきった目が俺を捉える。
その瞬間、俺は体が固まりそうになる。
ぱくぱくと口を二、三度開閉させて、そのまま空気だけを吐き出す。

音が、声帯が震えない。


「す、きだ、から、です。」


やっとのことで吐き出した言葉。
体が震える。
膝が震えて、今にも体が地面につきそう。
俺は足を踏ん張ってそれに耐える。

顔が熱くて……。

初めて口にした言葉には、こんなにも重さがあるのかと思った。

そう言えば誰にも好きだなんて言ったことないかもしれない。
伝えたことないかもしれない。


「……」


漸く胸を抑えながら震えが収まるのを待って、ゆっくりと顔を上げた。
すると早川さんは、気まずそうな顔をしたまま俺を見つめていた。
驚いている要素なんて微塵も見つけられない。


「……早川さん」

「俺はその気持ちには応えられないよ。お前のことだから分かってるんだろ。俺はあの人が好きだって。」


少し、距離を置いて。
言葉の長さ約10秒弱。


「知って……ますよ。」