2 「どうして。」 早川さんの冷めきった目が俺を捉える。 その瞬間、俺は体が固まりそうになる。 ぱくぱくと口を二、三度開閉させて、そのまま空気だけを吐き出す。 音が、声帯が震えない。 「す、きだ、から、です。」 やっとのことで吐き出した言葉。 体が震える。 膝が震えて、今にも体が地面につきそう。 俺は足を踏ん張ってそれに耐える。 顔が熱くて……。 初めて口にした言葉には、こんなにも重さがあるのかと思った。 そう言えば誰にも好きだなんて言ったことないかもしれない。 伝えたことないかもしれない。 「……」 漸く胸を抑えながら震えが収まるのを待って、ゆっくりと顔を上げた。 すると早川さんは、気まずそうな顔をしたまま俺を見つめていた。 驚いている要素なんて微塵も見つけられない。 「……早川さん」 「俺はその気持ちには応えられないよ。お前のことだから分かってるんだろ。俺はあの人が好きだって。」 少し、距離を置いて。 言葉の長さ約10秒弱。 「知って……ますよ。」 |