2 「お待たせいたしました。」 そのまま外を見つめていれば、ラーメンが来た。 俺の目の前に置かれる醤油ラーメン。 俺はもともとあっさりした味が好きだから、醤油の匂いを嗅いで、思わず美味しそうと舌鼓を打った。 「美味しそうですね」 「でしょ?」 「ラーメンなんてしばらく食べてなかったので……浮かれてます。」 「あはは、確かに。屋敷ではラーメンなんて出ないもんね」 湯気が立ち上るラーメン。 黄金色に輝く麺と香ばしい醤油の香りが、どんどん食欲を誘ってくる。 そういえば前に食べたとんこつラーメンもすごく美味しかったっけ。 あれは早川さんがいたからって言うのもある気がするけど……。 俺は割り箸を割って、そっと箸をスープの中に浸ける。 あぁ、とんこつラーメンもう一回食べればよかったかなぁ。 なんて思いながら麺を持ち上げた。 「とんこつ?無理無理味濃すぎ」 その時、隣の方からふと聞こえた声に思わず手が止まる。 何故かどこかで聞いたことがあるような気がする声。 ……耳に、引っかかる。 「隼也様?」 俺が急に止まったからか、様子がおかしいと思ったんだろう。 千尋が俺を覗き込んでくる。 そんな千尋に俺は首を振って、隣に耳を近づけると耳を澄ませた。 ……どこで聞いた声だろう。 あの声、どこで聞いたんだっけ。 耳を澄ませていると、隣からまた声がする。 うまく聞き取れないけれど、何かを話している。 「餃子だって油だらけですよ」 ……え? あまりにもするっと耳に入ってきたクリアな声に、戸惑う。 さっきの人とは違う声。 けれど聞いたことがある声。 いや、聞きすぎている、この声。 この声は、あの人の……。 |