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「お待たせいたしました。」

そのまま外を見つめていれば、ラーメンが来た。
俺の目の前に置かれる醤油ラーメン。
俺はもともとあっさりした味が好きだから、醤油の匂いを嗅いで、思わず美味しそうと舌鼓を打った。


「美味しそうですね」

「でしょ?」

「ラーメンなんてしばらく食べてなかったので……浮かれてます。」

「あはは、確かに。屋敷ではラーメンなんて出ないもんね」


湯気が立ち上るラーメン。
黄金色に輝く麺と香ばしい醤油の香りが、どんどん食欲を誘ってくる。

そういえば前に食べたとんこつラーメンもすごく美味しかったっけ。
あれは早川さんがいたからって言うのもある気がするけど……。

俺は割り箸を割って、そっと箸をスープの中に浸ける。
あぁ、とんこつラーメンもう一回食べればよかったかなぁ。
なんて思いながら麺を持ち上げた。


「とんこつ?無理無理味濃すぎ」


その時、隣の方からふと聞こえた声に思わず手が止まる。

何故かどこかで聞いたことがあるような気がする声。
……耳に、引っかかる。


「隼也様?」


俺が急に止まったからか、様子がおかしいと思ったんだろう。
千尋が俺を覗き込んでくる。

そんな千尋に俺は首を振って、隣に耳を近づけると耳を澄ませた。

……どこで聞いた声だろう。
あの声、どこで聞いたんだっけ。

耳を澄ませていると、隣からまた声がする。
うまく聞き取れないけれど、何かを話している。


「餃子だって油だらけですよ」


……え?

あまりにもするっと耳に入ってきたクリアな声に、戸惑う。
さっきの人とは違う声。
けれど聞いたことがある声。
いや、聞きすぎている、この声。

この声は、あの人の……。