5





「いらっしゃいませ、何名様で?」

「あ、2人です。」


2の形を作った指を店員に見せる。
すると店員は一礼してこちらへと言うと、テーブルの方へ案内してくれた。

カウンターは少ししかない。
このラーメン屋は割とテーブルが多く、しかも個室風になるように区切ってある。

俺は千尋を連れながら、案内されたテーブルにつく。

相変わらず人は多くもなく、少なくもなくと言った感じだった。

小洒落たカフェみたいなラーメン屋。
俺は千尋と対面に座ると、メニュー表を抜き取って広げた。

そこで、早川さんとこうやって眺めたのを思い出す。
早川さんが頼んだとんこつラーメンを俺が食べたんだっけ。


「千尋なに食べる?」

「あぁえっと、塩ラーメン……」

「塩?わかった。」

「隼也様は?」


俺はもちろん決まっている。
前早川さんが食べた醤油ラーメン。
早川さんの好きなとんこつラーメンも捨てられないけど……。

早川さんとここに来たのを思い出して、それから胸がズキズキ痛む。

俺とご飯を食べるために来たんじゃなかったことを思い出したからだ。

そういうの、無しでご飯食べたかった。
すこしでもいいから、俺だけを見てくれる時間。
俺のことしか頭の中にない時間が……欲しかった