3 俺の服に着替えた千尋は、いつもと違ってそこら辺に居そうな青年になった。 固めてある黒髪を少し崩してやる。 「千尋……君、もったいないね」 「え?」 「いや……なんていうんだろう。俺もよくわからないけどさ……ここに務めてなかったらもっといい生活送れた気がする」 「なにをいってるんですか……」 よくわからないけど、街中で女の子を連れて歩いている男よりも、小洒落た感があって……なんだろう。 それなのに、洗礼な空気感があって……。 千尋の周りだけ少し違う空気が流れているような気がしてしまう。 これが……モテそう……というやつか。 「かっこいいってことだよ」 「……また……そういうことを言うんですから隼也様は……何も出ませんよ」 「なにか出してよ……」 「出ません」 少し顔を赤くした千尋が、鼻の下をかいて「はぁ」とため息を吐いた。 「照れてる?」 「て、てれ……照れますよ……」 「はは、そっか。」 なんとなく可愛い。 そう思ってしまって、弟がいたらこんな感じなのかなぁと思ったりした。 でも俺は兄とそんなに話すことはないし、何より一緒にいることは無い。 予測を立てられたのは、きっと他の人の話やドラマ……本から知識を得ていたからだ。 兄とこんなふうに仲が良かったら、今頃どんなふうになっていたんだろう。 少しだけそう思って、俺は首を振った。 あの兄とそんな風になんてもしかしてもない気がした。 「よし、行こう千尋」 「あ、はい。」 |