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俺の服に着替えた千尋は、いつもと違ってそこら辺に居そうな青年になった。
固めてある黒髪を少し崩してやる。


「千尋……君、もったいないね」

「え?」

「いや……なんていうんだろう。俺もよくわからないけどさ……ここに務めてなかったらもっといい生活送れた気がする」

「なにをいってるんですか……」


よくわからないけど、街中で女の子を連れて歩いている男よりも、小洒落た感があって……なんだろう。
それなのに、洗礼な空気感があって……。
千尋の周りだけ少し違う空気が流れているような気がしてしまう。

これが……モテそう……というやつか。


「かっこいいってことだよ」

「……また……そういうことを言うんですから隼也様は……何も出ませんよ」

「なにか出してよ……」

「出ません」


少し顔を赤くした千尋が、鼻の下をかいて「はぁ」とため息を吐いた。


「照れてる?」

「て、てれ……照れますよ……」

「はは、そっか。」


なんとなく可愛い。
そう思ってしまって、弟がいたらこんな感じなのかなぁと思ったりした。

でも俺は兄とそんなに話すことはないし、何より一緒にいることは無い。

予測を立てられたのは、きっと他の人の話やドラマ……本から知識を得ていたからだ。

兄とこんなふうに仲が良かったら、今頃どんなふうになっていたんだろう。

少しだけそう思って、俺は首を振った。
あの兄とそんな風になんてもしかしてもない気がした。


「よし、行こう千尋」

「あ、はい。」