2 土曜日。 何もせずに一日を過ごしてしまった。 千尋が持ってくる紅茶やコーヒーを飲みながら、部屋の窓から見える庭を眺める。 と言っても小さくてほとんど何も見えないのだけど。 いつも綺麗に整えてある。 そういえば昔使用人さんたちと、よく鬼ごっこやかくれんぼをしたっけ。 みんな何時もほぼ本気でしてくれた気がする。 でも自分が鬼になることは無かったけど。 いつからかすることは無くなってしまって、でもたまに無性にしたくなる。 幼い頃の記憶といったらそれしかないけれど、楽しかったな。 「隼也様、準備できました。」 日も沈みかけた夕暮れ。 俺は約束のラーメン屋にいくべく、千尋を待っていた。 ノック音とともに現れた千尋。 その姿を見て俺は目を丸くしてしまう。 「まさかのその格好で行くつもり?」 「え?なにか問題ありますか?」 千尋の格好は燕尾服ではないけれどスーツ。 いやいや、そんな格好はちょっと。 「ありありだよ!もっと普通の服着て!」 「普通の服……」 自分の格好を見て眉根を寄せる千尋。 いやいや、まさか。 その格好で行ったら注目浴びまくりだよ。 「俺の服貸すから、ほら脱いで」 「え、ええ?!ダメです!」 「俺が嫌なの!!ほら!」 俺はクローゼットの中から適当に服を選ぶ。 そして千尋の方へと投げる。 千尋のほうが少し背は大きいけれど、大して変わらないから大丈夫なはず。 「隼也様の服を……」 「いいから。ほら、トモダチ」 「……全く……わかりました。着替えますよ……。」 |