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土曜日。
何もせずに一日を過ごしてしまった。

千尋が持ってくる紅茶やコーヒーを飲みながら、部屋の窓から見える庭を眺める。
と言っても小さくてほとんど何も見えないのだけど。

いつも綺麗に整えてある。

そういえば昔使用人さんたちと、よく鬼ごっこやかくれんぼをしたっけ。
みんな何時もほぼ本気でしてくれた気がする。
でも自分が鬼になることは無かったけど。

いつからかすることは無くなってしまって、でもたまに無性にしたくなる。

幼い頃の記憶といったらそれしかないけれど、楽しかったな。


「隼也様、準備できました。」


日も沈みかけた夕暮れ。
俺は約束のラーメン屋にいくべく、千尋を待っていた。
ノック音とともに現れた千尋。
その姿を見て俺は目を丸くしてしまう。


「まさかのその格好で行くつもり?」

「え?なにか問題ありますか?」


千尋の格好は燕尾服ではないけれどスーツ。
いやいや、そんな格好はちょっと。


「ありありだよ!もっと普通の服着て!」

「普通の服……」


自分の格好を見て眉根を寄せる千尋。
いやいや、まさか。
その格好で行ったら注目浴びまくりだよ。


「俺の服貸すから、ほら脱いで」

「え、ええ?!ダメです!」

「俺が嫌なの!!ほら!」


俺はクローゼットの中から適当に服を選ぶ。
そして千尋の方へと投げる。

千尋のほうが少し背は大きいけれど、大して変わらないから大丈夫なはず。


「隼也様の服を……」

「いいから。ほら、トモダチ」

「……全く……わかりました。着替えますよ……。」