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「なに?そうだなぁ……」


口走ってみたものの、何も考えてない。
俺はしばらく考える。

そして俺はひとつ思いついた。


「ラーメン屋」

「?」

「あのラーメン屋に行きたい。」


千尋が少し不思議そうな顔をする。
それもそうだろう、千尋には何も話してない。



「あー……えっと、あの人につれていってもらったことがあるんだよ。ラーメン屋に。そこにさ、行きたいなって」


連れていってもらった?
連れていったに近い気もするけれど。


「私とですか?」

「そ。」

「そのような場所に……私が」

「友達でしょ?慰めてよ。」

「慰め……どうしてそれが慰めることになるんです……?」


千尋は困ってる。
本当はそんなことしちゃダメだからだろうな。
でも俺がいいと言ってるんだから、いいのに。


「すごく楽しかったんだ。話も弾んでね……。 」


美味しかったな、ラーメン。
ラーメンは美味しかったし……なにより、初めて早川さんと外で一緒に行動したことが嬉しくて……。
俺の幸せな記憶の一つだ。


「でも、思い出すと辛いんだ。またしたいまたしたいって思っちゃって、だから……千尋で塗り替えたい」

「私はただの友人なのに塗り替えられますか?」

「早川さんとの場所だけじゃないものにするんだ。そうしたら気がまぎれそうな気がしない?」

「……どうでしょう」


千尋は少し納得の行かない、という表情をしている。
けれど、しばらくするとコクッとうなずいた。


「私は隼也様の執事です。私で出来ることならなんなりと致しましょう。」

「あ、はは!固いよ!そんな固くならなくていいよ。ほんとにさ、友達と行くみたいに」

「それはなりません」

「なんなの……また話が振り出しに戻ってるじゃん。じゃなきゃいやだよ……。……明日はちょっと気乗りしないから日曜!日曜に行こう!」

「承知しました。ラーメンちゃんと食べてくださいね」

「もちろんだよ。ありがとう千尋」