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「はは、ありがとう千尋」

「え?」

「ほら、そうやって真剣に考えてくれてさ。」

「当たり前ですよ。話してくださったんだからその思いには応えないと……」

「うんうん、千尋は優しいよ」


そのままベッドに横になって体を伸ばす。
うーん……やっぱり俺にはあまり希望がないのだろうか。


「千尋、俺の恋が叶う可能性はないのかな。」


ごろんと寝返りを打って、千尋を見つめる。


「だって、風俗だよ?誰とでもセックスする女の人だよ?そんな人に好きな人任せられないよ俺は……。」

「そうですね……」

「初めて好きになったんだ……。俺をブランドで見ない人、俺の目を見てちゃんと話をしてくれる人……仕事も教えてくれて……仲いいとはいえなかったけど……優しかったし、ご飯も連れてってもらったし……。」


俺の頭の中には早川さんとの思い出が駆け巡る。
整理できないほどの思い出がある。
初めてあった結婚式場から、つい数時間前まで。

初めてもっとそばにいたい、もっといろんな顔が見たい、一緒にいろんなことがしたい、そう思える相手に出会ったのに……。


「距離を置いてみるのも手ですよ……押すんじゃなくて引くとか……、」

「うん、そうだね。わかってるんだけどね……あの人を見るとなかなかじっとしていられなくてね……」


思わず思いため息が出る。
何を考えても平行線だ。

恋、というのはこんなに難しいものなのだろうか。

きっと、俺は自分でいろいろ難しくしてしまっているのかもしれない。
難しい相手に恋をしてしまっているのかもしれない。


「千尋、忘れさせてよ。」

「え?」

「失恋した友達は慰めるもんなんでしょ?聞いたことがある。」

「……何を……したらよいのです?」


ほろりと言ってしまった言葉。
そしてこの後の話の展開で、俺はまた早川さんとの仲をこじらせてしまうことをしてしまうことを、この時の俺は知る由もなかった。