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スプーンを差し込んだ瞬間、スプーンの熱で溶けたアイスが簡単に切れてくれる。
つややかな桃のコンポートも、簡単にスプーンでほろりと崩れてしまって、俺はその二つを一緒にスプーンに乗せると口へと運んだ。

舌を包み込むような爽やかな桃の甘さと、甘すぎないバニラアイスが、口の中に広がっていく。
体温で溶けてしまうバニラアイスと、舌と上あごを合わせただけで崩れてしまう桃は簡単にのどへつるりと流れ込む。


「美味しいですか?」

「うん、美味しいよ。」

「ふふ、よかったです。」


しかし、明かりをつけたせいで見渡せる部屋はすべて早川さんに繋がってしまう。

ブルーバスターのCDは、早川さんの趣味だし、俺がいつも着ていく服は会社のことを思い出してしまう。


「隼也様?」

「ん?」

「あの、私のようなものが聞くのは大変失礼極まりないのですが……なにか、あったのですか?」


黒の燕尾服に身を包んだ千尋。
最初に出会った時は、なれない使用にんと言った感じだったのに、おれの執事になるなり急に成長した気がする。
まだ、おどおどしているところとかはあるけれど。

綺麗な黒髪は、綺麗に固められて仕事に支障がないようにさせられている。


「……失礼とかそんなのないよ。最初に言ったでしょ俺。君とは友達になりたいって」

「え、あ……あぁ……」

「そんなかしこまらなくたっていいのにさぁ。窮屈だよ」

「……そんなこと申し上げられても……隼也様はいつも私を困らせる……」


食べ終わった食器をトレーに返す。
千尋は困ったような顔をしたまま俺を見つめていた。


「困らせたいわけじゃないよ。別にさ」

「……」

「早川さんにだってそうなんだ。別に、困らせたいわけでも嫌がらせしたいわけでも、ない。」