6 明るくなった部屋に思わず目を細める。 目が少しチカチカする。 そんな中、千尋は俺に近づいてきた。 「隼也様が好きな桃のコンポートです。バニラアイス添えですよ。」 千尋は左手にトレイを乗せて、その上にデザートを乗せていた。 今日のデザートだろうか。 俺の好きなコンポート。 コンフィチュールも好きなんだけど。 コンポートも好きだ。 イチヂクやリンゴ、あのちゅるりとした味がなんともいえない病みつきになる。 「今日の?」 「いえ、食欲がないとおっしゃっていたのでこれなら食べて下さるかと思って。好きなものですし、涼もとれますでしょう」 「千尋が作ったの?」 近くのテーブルを持ってきて、そのうえにティーカップとティーソーサーを用意する千尋。 「最近ずっと食欲がないと仰るので…好きなものでも食べてもらおうと思って用意していたのですよ。今日のデザートはスイカのソルティードックでした。」 「へぇ、カクテルだ」 「飲んだことあります?」 コンフィチュールだ。 小瓶に入った桃のコンフィチュールを、ティーカップの底に沈めてそのまま紅茶を注ぐ千尋。 ピーチないい香りがしてくる。 「ないよ。千尋は?」 「私も無いですよ。どうぞ、これならお召し上がりになるでしょう?」 「あはは、たしかにここまでされたら食べないわけには行かないな。」 キレイに整えられたテーブルの上。 俺は体を起こすと、そのテーブルに向き合う。 「スイカのその、なんだっけ。カクテル。も、もって来てよ」 「桃の後にスイカですか?隼也様はくだものがお好きなのですか?」 「うん。みんなはあまりそうではないみたいだけど、おれは好きだよ。甘いもの意外と好きなんだ」 「ふふ、意外などではないです。あなたらしいですよ。」 千尋がふふ、と上品に笑う。 その姿を見ながら、俺はスプーンをバニラアイスに差し込んだ。 |