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真っ暗の部屋。
電気もつけずにそのままベッドにダイブした。

考えることがありすぎてしんどい。

このまま現実逃避してしまいたいけれど、今は何を見てもすべてが早川さんにつながってしまう。
それほどまでに俺にとっての早川さんは大きい。

会いたい。
会いたくない。

考えたい、考えたくない。

最近はずっとそれの繰り返しだ。


前はあんなにも早川さんに会えるのが楽しみだったのに。

恋というのはこんなにも苦しいものなんだろうか。
それならどうして人は恋をするんだろうか。

途方もなく意味のわからないとこまで考えて、意味がわからなくなって布団を頭からかぶる。


いつものルートだ。


空調の効いた部屋で、1人「あーあ」とごちて寝返りを打った。

どうしたらこの悩みから解放されるんだろう。
そんなの回答は一つだ。
あの人を好きになるのをやめればいい。

でもそんな簡単なことじゃない。

好きになるのは簡単だけど、好きになった人を嫌いになるのは相当難しいと思う。

だって俺は、両親や兄すらも嫌いじゃないから。


コンコン、と部屋をノックする音がする。
その音を聞いて、俺はまた寝返りを打った。

また千尋だろうか。
……飯をたべろと言いに来たんだろうか。
お腹空いてないし、食べたいとも思わないのに。

なんだか悩みを食べているようだと思った。
悩みはまずいくせに少しでお腹いっぱいになる。


「隼也様、入りますよ」


何も応えずにいたら、間もなく入口がガチャと音を立てて外の灯が中に流れ込む。


「また電気もつけずに……つけますよ。」

「……千尋。」