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「千尋が……作ってくれるの?」

「えっ」


ドアのノブに手をかけて、千尋をのぞき込む。
千尋は少し驚いたような顔をしてから、「しゅ、隼也様がそれをお望みならば」そう小さい声で言った。


「え?千尋ってご飯作れたの?」

「えと……すこし……ですが」

「へぇえ……おいしい?」

「そんなことを私に聞かれても困ります……。でも私は美味しいと……思います。」

「ずいぶん自信があるんだね。結構千尋って自分でハードルを上げてくタイプ?」

「なっ!!!それは隼也様が!」

「俺が、なに?」


にやにやと笑ってみれば、千尋が「やられた!」とでも言うように恨めしそうな顔をする。


「いじめ……る、から」

「俺がいついじめたっていうんだよ?酷いなー千尋ちゃんは」

「千尋ちゃんはやめて下さいって!!」

「あはは、てことで。風呂は明日にでも入るから。ごめんね千尋」


興奮し始めた千尋から持たせていた鞄を取り返すと、俺はノブを捻った。
そしてドアを開けると、そのまま中に入って千尋に手を振る。
少しびっくりしたような顔をして、それから「あっ」というような顔をした千尋。

そんな千尋を鼻で笑った俺は、そのままドアを閉めた。