3 どうしてこんなにも見ているのに、見てくれないんだろう。 どうしてこんなにも好きなのに、あの人は俺のことを好きになってくれないんだろう。 わりと強靭なメンタルを持っているつもりだけど、早川さんにされる無視はなかなかメンタルにくるものだった。 早川さんは、無視はしない人だと思ってたのになぁ。 俺はそんなにもあの人を怒らせてしまったんだろうか。 だけど、だけど。 だって、仕方ないじゃん。 好きな人が風俗嬢にたぶらかされてるの見て、「叶うといいですね」なんて俺は笑っていられない。 確かに、風俗嬢をやめて俺にしろって言うのも、体裁的に良くないし、むしろ風俗嬢が女なだけいいのかもしれない。 ほら、人間って本来女と男で恋ってするもんだし。 だけどさ、だけどさぁ。 せめて普通の女の人なら、俺も素直に応援できたのに。 悩みに悩みすぎて食欲が湧かないし、前までは何されても笑い飛ばせてたけど、今はできない。 俺相当弱ってる。 部屋開けてベッドに横になろ。 風呂は後でもいいや。 明日は休日だし、むしろ起きてからに入っても。 いつもはすぐにドアを開けてくれる千尋が開けてくれない。 あれ?とおもって思わず千尋を見る。 脇に立っていた千尋は、俺を見つめていた。 「なに?千尋。」 「ダメです。食べてください」 「え?」 「昨日だってそうやって、隼也様お夕食軽めに取られていたじゃないですか。朝食だってお食べにならないし。」 「……」 千尋が俺を見つめて、不満気な声を出す。 その声は、俺が千尋にいたずらをした時にしか聞こえないような声。 「食欲がないのはわかりますが、食欲が無くても食べられるものを用意しますから。」 くりくりの黒い目が、俺を捉えた。 きゅうっと鞄を掴む仕草に、思わず肩の力が緩んだ気がした。 |