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しばらく志乃さんをぎゅーと抱きしめたまま、ぼうっと考える。
これがそのまま続けばいいなと思うことで、思い当たることがひとつあるような気がする。

なんだっけ?

そして、はっと思いつく。
そうだ、ラーメンだ!

行く日を決めとかなきゃ。


「そうだ、志乃さん。休みいつです?」

「休み?なんで」

「ラーメン。決めとかなきゃ忘れるでしょ?」

「あ、あぁ、あぁ……えっと休み?いつだったかなぁ?」

「いつもの休みは?」

「いつもはなー日曜」


何で今迷ったんだ。
そう思ったけどそこは黙っとく。

志乃さんは、まだ何かを考えているようだった。
夜の仕事だから、いろいろ事情があるのだろうか。
……いつでも同じ休みじゃないとか?
でも、バーとかなら日曜は店自体が休みだと聞くことがあるのだけど。
同じ夜の店でもそこら辺は違うのだろうか。

てか、決まってないならだめじゃないか!
いつでもいいっていってたくせに!

結局俺の事なんてどうでもいいんだなこの人は。

そう思って少しさみしくなっていると、志乃さんが俺の顔をのぞき込んだ。


「ハル」

「はい?」

「お前の休みはいつなの」

「え……俺の休みはえっと、普通に土曜と日曜です」

「ふうん、じゃあ今週の日曜で」


ニヒ、と笑うその顔。
まるで考えてることはお見通しだとでもいうようなタイミングの良さに、思わず「ぐ」と言葉に詰まる。


「志乃さん……」

「何時にどこ集合かとかはまたメールでも電話でもしろ。あーでも電話は出れねーからやっぱメール」


自分のケータイがどこにあるかもわからないんだろう。
志乃さんはキョロキョロして諦めたように、俺を見直した。

でもそれを見ていると、本当にこれが夢じゃなくて、その場しのぎの嘘じゃなくて、本当なんだって感じがしてきて、ぐわっと何かがこみ上げてくる。


「本当に行ってくれるんですかぁあ」


思わず声を出せば、自分でも情けなくなるほどの声が出た。
志乃さんもそれは思ったようで、俺の頭を軽く叩くと「嘘は言わねーよ」と笑った。


あぁ、今からすごく日曜日が楽しみになってきた……。