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自分の体を、自分以外の体の一部によって犯されている。
それは、改めて感じるとすごいことなんじゃないかと感じる。


「はぁ……っ、志乃さん……志乃さんっ」

「あっ、んん、あっ……は、」


ゆっくり、出たり入ったりを繰り返すソレ。
そのゆっくりとした動きに、内壁が擦られる度ビクビクと体が震える。

生殖行為だ。

ハルの顔を見ながら、そう思う。
俺も、オンナに遺伝子を注ぎ込んでやろうと必死になっている時は、こんな顔をしているんだろうか。

必死で、目の前のオンナを、見つめている。
逃げ出さないように、視線で縛り付ける。
雁字搦めをされたように、動けない。
逃げ出そうと思ってもきっと逃げ出せない。


「志乃さん、好きですっ……」

「ぅ、っは、あっ、あぁ、あ!」


噛み付くように至るところキスをして、首筋へのキスはまるで、逃げたら殺すぞとでも言いたげな気がする。

好き、が今まで聞いた何よりも響いて、痛かった。
いつもなら笑い飛ばせるその言葉が、何十倍も重くなってのしかかってくる気がした。
ハルが言ってる調子はそんなに変わらないのに。

いつもなら、嬉しいありがとな。
それで終わりなのに、どうしてか言って欲しくないと思ってしまった。

こんなにも、生物の本来の営みを邪魔している感を感じるのは初めてだ。
のしかかってくる、正体不明の罪悪感。


「どうしたの、志乃さん気持ちよくない?」


腰は止めずに、ゆさゆさと俺を揺さぶりながら俺に問いかけるハル。
俺はゆるゆると首を振りながら、ハルの首にかけていた腕を床の上に投げた。


「んなわけ、すっげー……イイよ」


俺はセックスが好きじゃない。

裸になって、俺は本来感じるところじゃない場所で感じて、オンナと呼ばれて。
本来入れるべきでない場所にちんこ突っ込まれて、ナマの時はナカにぶちまけられる。

俺は妊娠はしないし、妊娠する要素も持ってない。

たとえどうでもいい人間でも、それをされるとなんだかいたたまれなくなる。

ハル、だったら尚更に、なぜか、
ごめん、と言いたくなってしまう。


「は、……あ、ハルちょっと抜け」

「抜く?」

「ん、抜いて」


ハルが怪訝そうな顔をする。
そして、ちゅぽっと抜けたそれを感じて俺はゴロンっと寝返りを打った。