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「はーー、もう。もう!照れるわお前!馬鹿!」

「ふふっかーわいーなー」

「あぁあもう!」


可愛い……。
久々の志乃さんに癒されながら、俺はその顔を見つめる。


「ねぇ志乃さん」

「あー?んだよもう。」

「拗ねないで下さいよ」

「別にすねてなんかねーよ」

「ふふ、嘘だ。唇尖ってる」


尖った唇に指を置くと、ふに……と形が変わって、志乃さんが少しだけ穏やかな表情になる。
その表情はまた、俺の奥底の男の部分に火をつけるもので、俺は見て見ぬふりをしてそっと手を離した。


「俺本当に志乃さんのこと好きです。今の志乃さんも好きだし、バンド活動してた時の志乃さんは尊敬してます。だから、バカにするなんてこと絶対にないのでもう疑わないでください。絶対しませんから、神に誓ってもいいです」

「そう簡単に神に誓っちゃダメなんだぜ?」

「誓いますよ。天変地異が起きてもこの事実は変わらないですもん。」

「天変地異ねぇ。ん、んー……うん。俺もさ、お前のことは信じてたよ」


志乃さんが俺の目を見る。

信じてた?どういうことだろう。

汗をかいたグラスの中身がコロンっと音を立てた。


「お前は、そういう意味で言ったんじゃねーって、ちょっと思ってた」

「え?!じゃあなんで?!」

「なんでって、そりゃ……話は長くなるけどよ。」

「えぇえええ?!そうなのーーー?!」


思わず頭を抱える。

なんで怒ったのかわからないけど、俺の言ってる真意は伝わってたんでしょ?
どうしてあんなふうに傷ついた顔をしたの?


「それなら早く言ってよ志乃さん!!」

「あ?」

「俺このことでどれだけ悩んだと思ったの!」

「いや、知らんけど」

「すっごく悩んだんだからね?!それならそうと早く言ってくれれば俺もっと早く会いに来たのに!!志乃さんに嫌われたって思って!!連絡も取れなかったし……」

「……だってよー……あんなことがあった手前そんなん……言いにくいだろ……なんて言やいいんだよ」

「知らないよー……メール返してくれればよかったんだー……」


もう……嫌われてないならもっと早く会いにくれば良かった。


「もう、志乃さん……はぁ……良かった……」