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「え?志乃さん?」


思わず問いかければ、志乃さんは顔を覆ったまま動かなくなってしまった。

え?

と思いながら見つめていると、志乃さんがなにやら喋り出す。


「お、……まえ、……い……」

「え?」

「だから!!!なんでそう恥ずかしいこと以遠のお前は!!」

「え?!どうして?!」

「お前が、そうなのは知ってたけど……改めて言われると……やべえ……」



志乃さんは顔を覆っていた手を口にずらすと、はぁとおっきくため息を吐いた。

こっそり顔を覗いてみる。
なにか、気に触ったこと、言った?

そう思ったけど、口角はちゃんと上がっていた。

……え、もしかして。


「志乃さん照れてる?」


思わずそう声を掛けたら、志乃さんは何も言わずに首を軽く左右に振った。
そんなゆるく振られたら、肯定してるようなもんだ。

まって、ちょっと、まって、可愛すぎない?


「っあーーもう、見るなって」

「やだ、見せてください志乃さん」

「やだよ。みんな」

「見せて下さいよぉ……見たい」


そのまま志乃さんに顔を近づけたら、ちらりとこっちに目を向けた志乃さんが俺から遠のく。

けれど俺は志乃さんの肩を持って、阻止する。

動けなくなった志乃さんが「う」と声を出した。


「見せて……」

「や……だ……よ。おっさんの顔見て何が楽しいんだよ……」

「おっさんじゃないから、志乃さん」


口を覆っていた手がいつの間にか、顔前面になっている。
俺はその手に手をかけて、指先でトントンッと叩いた。


「無理……」

「見せてよ。」

「あっ、ふぁ……お前!」


押してダメなら引けと手の甲を舐めてみたら、志乃さんの手がどこかに消えて志乃さんの顔が現れた。

まだ赤みの残っている肌。
嬉しさのあまりか頬が緩んでて、口角が上がっている。
そんなに嬉しいことなのかなぁ?


「志乃さん、可愛いです」

「うれ、しくねー……」


志乃さんが俺の手を軽く払いのけて、首を振る。
嘘だ。

それ、嫌がってない。