3 「え?志乃さん?」 思わず問いかければ、志乃さんは顔を覆ったまま動かなくなってしまった。 え? と思いながら見つめていると、志乃さんがなにやら喋り出す。 「お、……まえ、……い……」 「え?」 「だから!!!なんでそう恥ずかしいこと以遠のお前は!!」 「え?!どうして?!」 「お前が、そうなのは知ってたけど……改めて言われると……やべえ……」 志乃さんは顔を覆っていた手を口にずらすと、はぁとおっきくため息を吐いた。 こっそり顔を覗いてみる。 なにか、気に触ったこと、言った? そう思ったけど、口角はちゃんと上がっていた。 ……え、もしかして。 「志乃さん照れてる?」 思わずそう声を掛けたら、志乃さんは何も言わずに首を軽く左右に振った。 そんなゆるく振られたら、肯定してるようなもんだ。 まって、ちょっと、まって、可愛すぎない? 「っあーーもう、見るなって」 「やだ、見せてください志乃さん」 「やだよ。みんな」 「見せて下さいよぉ……見たい」 そのまま志乃さんに顔を近づけたら、ちらりとこっちに目を向けた志乃さんが俺から遠のく。 けれど俺は志乃さんの肩を持って、阻止する。 動けなくなった志乃さんが「う」と声を出した。 「見せて……」 「や……だ……よ。おっさんの顔見て何が楽しいんだよ……」 「おっさんじゃないから、志乃さん」 口を覆っていた手がいつの間にか、顔前面になっている。 俺はその手に手をかけて、指先でトントンッと叩いた。 「無理……」 「見せてよ。」 「あっ、ふぁ……お前!」 押してダメなら引けと手の甲を舐めてみたら、志乃さんの手がどこかに消えて志乃さんの顔が現れた。 まだ赤みの残っている肌。 嬉しさのあまりか頬が緩んでて、口角が上がっている。 そんなに嬉しいことなのかなぁ? 「志乃さん、可愛いです」 「うれ、しくねー……」 志乃さんが俺の手を軽く払いのけて、首を振る。 嘘だ。 それ、嫌がってない。 |