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あんな言い方しなくてもいいだろ。
そう思いながら俺は駅まで歩く。

この時間は高校生とよくすれ違う。
暑いからだろうか、アイスを食べながら駅を目指しているのを見える。

俺もしたなぁ……

志乃さん、今何をしているんだろう。

誰にでも股開く。
変な病気持ってるかもしれない。

何も知らないのにそんな事言うな。
そう思った。
けど、はた、と気づく。
俺だって数か月前はそう思ってた。
志乃さんのことを知らないあいだはそう思ってた。

初めてあった時その気持ちをぶつけたら、志乃さんは傷ついたような顔をして、すぐにそれを隠そうとしてた。

別に変わった感情じゃないんだあれは。
誰もが思ってしまうこと。

それなのに負の言葉を言われた時、志乃さんはいつも寂しそうな、傷ついたような顔をする。

そりゃそうだ、平気なわけがない。


いつもいつも傷ついてるんだ。


昨日は大丈夫だっただろうか?
一昨日は?その前は?

あんな仕事してて、何も言われないわけない。
俺でさえ志乃さんを傷つけるようなことを言ってしまうんだ。
志乃さんのこと、なんとも思ってない人なんてきっともっと言ってしまう。

俺は、雨の中傘も差さずに立っていた志乃さんを思い出す。

傷ついてないだろうか。
大丈夫だろうか。

心配だ。
心配するともうキリがない。

会いたい。
会って大丈夫なのか確かめたい。
もしも辛いなら、俺が志乃さんの頼る場所になりたい。


俺は電車が来たのを見てから、目を瞑った。