1 あんな言い方しなくてもいいだろ。 そう思いながら俺は駅まで歩く。 この時間は高校生とよくすれ違う。 暑いからだろうか、アイスを食べながら駅を目指しているのを見える。 俺もしたなぁ…… 志乃さん、今何をしているんだろう。 誰にでも股開く。 変な病気持ってるかもしれない。 何も知らないのにそんな事言うな。 そう思った。 けど、はた、と気づく。 俺だって数か月前はそう思ってた。 志乃さんのことを知らないあいだはそう思ってた。 初めてあった時その気持ちをぶつけたら、志乃さんは傷ついたような顔をして、すぐにそれを隠そうとしてた。 別に変わった感情じゃないんだあれは。 誰もが思ってしまうこと。 それなのに負の言葉を言われた時、志乃さんはいつも寂しそうな、傷ついたような顔をする。 そりゃそうだ、平気なわけがない。 いつもいつも傷ついてるんだ。 昨日は大丈夫だっただろうか? 一昨日は?その前は? あんな仕事してて、何も言われないわけない。 俺でさえ志乃さんを傷つけるようなことを言ってしまうんだ。 志乃さんのこと、なんとも思ってない人なんてきっともっと言ってしまう。 俺は、雨の中傘も差さずに立っていた志乃さんを思い出す。 傷ついてないだろうか。 大丈夫だろうか。 心配だ。 心配するともうキリがない。 会いたい。 会って大丈夫なのか確かめたい。 もしも辛いなら、俺が志乃さんの頼る場所になりたい。 俺は電車が来たのを見てから、目を瞑った。 |