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「俺が昨日風俗の事言ったから?」


少し声をちっさくして言ってくる隼也。
そこで俺の頭痛は少し引いた気がした。


「どうして?」

「なんだか最近、ずっと元気なかったじゃないですか。それって、風俗いけなかったからでしょ?」


……隼也の言葉を聞きながら、なんとなくなんだかいたたまれない気持ちになってしまう。

風俗に行けなかったから元気ないって、人間のクズじゃないか。


「そんなことないよ」

「絶対そうっすよ!昨日だってその話題出した時すごいさみしそうな顔になりましたもん!」

「見間違い……」

「早川さん嘘つくの下手だからなー……」

「どういう意味だよ」

「そのままですって」


隼也が口を尖らせながら、ブツブツという。
俺は帰りたいんだけど、しばらくこの話に付き合わなければいけない気がする。
俺は戸締まりや軽い整理整頓をしながら、隼也の話を聞いているふりをする。

志乃さんのことは考えるとキリがないから、今は考えたくなかった。

しかも、今その話題を出してきた隼也に少しだけ苛立ちを覚えていた。
隠しきれない俺が悪いんだけど、ほじくらなくてもいいとおもう。


「そんなにその風俗嬢?好きなんすか?」

「好きじゃないよ」

「……風俗嬢なんてやめたほうがいいっすよ。客のことなんとも思ってないし、変な病気持ってるかもしれないし。誰にでも股開く仕事してるんすよ?絶対やめた方がー……「うるさいな」」


思わず口を挟んでしまっていた。
かなりぶっきらぼうに隼也の言葉を遮ると、俺はカバンを持った。

聞いてないふりをしていたつもりがガッツリ聞いてしまっていた。


「でもだって」

「お前には関係ないだろ。」


まるで、志乃さんの悪口を言われているように感じてしまった。
志乃さんはあんなにも毎日辛い思いしながら頑張ってるのに、どうしてそんな事言われるのかわからない。
イラついてしまった俺は、チッとしたうちをしてしまう。

少しうろたえたような顔をする隼也。


「これ、1階の事務。返しといて」


俺は隼也に鍵を押し付けると、そのままそこを出た。