3 あれしといて、これしといて。 仕事のことから、完全に私用の用事さえ隼也は喜んでやる。 ちょっと出来心で頼んでみたら、やってくれたから正直引いた。 けど真面目に何でもやるから、可愛いと思う。 最初の頃に比べたら全然嫌いという気持ちも薄れてきていた。 ただ、俺の周りに来る度に香ってくる整髪料の匂いには、毎回くしゃみをしてしまうのだけど。 なんでそんな臭いの使ってるんだ。 「早川さーーん?いつご飯連れてってくれるんすかー?前約束したじゃないっすかぁ?」 仕事を邪魔してこないおかげで、定時付近で仕事も終わって俺は最近、仕事の面では快調だ。 しかし、隼也に邪魔されて仕事がなかなか終わらなかった時よりも、志乃さんとの時間が無くなった今の方が、かなり充実してないと感じてしまう。 「あー……そうだなぁ。俺今給料日前で金ないんだよ」 「うーそー!!俺早川さんがそこそこ金あるの知ってますよ!!!」 「は?」 いつも定時を少し過ぎたあたりに帰る俺は、大概すっからかんの仕事場の戸締まりをして帰る。 つい最近まで定時がきたら飛ぶように帰っていたくせに、最近は俺が支度が終わるまで待っている。 そしてここぞとばかりにマシンガントークをはじめるのだ。 いつもいつもよくそんなに話すことがあるなと思うのだけれど、尽きないらしい。 「風俗行ってるじゃないですか!」 「……」 特に気にせず戸締りをしていた俺の手が止まる。 それは、少し隼也のお陰か何かは知らないけれど、忘れていた志乃さんのことを思い出したからだった。 |