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しばらくそのメールを見ながら悩んだ挙句、俺は何も返信しなかった。

あんなことを言った手前、普通にメールを返すのにも気が引けた。
それに、今更なんと言っていいのかもよくわからなかった。

あんなことを言って突き放しておいて、「取りに行く」とか、「持ってこい」なんて言えない。

別にあの服は捨ててもいいものだが。
その服を口実に会うことを、今はまだする勇気が出ない。


あいつは俺に呆れただろうか。


そもそもあいつは、俺についてどう思っているのだろう。

自分が尊敬していたバンドのメンバーが、バンド解散後擬似風俗店に務めていて、なすがままに体を暴かせる男に成り下がっていて。

軽蔑した?
引いた?

あいつは、俺のことを好きだというけれど、正直、本当は俺を見下しているんじゃないだろうか。

かわいそうなやつだと。

大量に家に置いている俺たちのCDを見て、嘲笑ってるんじゃないだろうか。


マイナス思考ばかりが頭を駆け巡る。
昔はもっと物事をプラスに考えられていた気がするのだが、最近は自分でもびっくりする程にマイナス思考だ。


あいつはもう、俺を嫌いになってしまっただろうか。
あいつはもう、俺に会いに来てはくれないのだろうか。


シンデレラ気取りのヒステリック売男。
とでも思われただろうか。


けれど俺はそう考える反面、車を出る間際に、あいつが俺の名前を必死に呼んでいたのを思い出していた。


あいつはそんなこと思って無いだろうか?


あんな客の一人ぐらい。

そう思ってしまえばいい。
そうは分かっているのだが、俺はこのメールをなかなか削除できないようだった。

何度も「削除しますか?」のプルダウンメニューをみて、戻るボタンを押していた。