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「志乃君ありがとう。」

「こちらこそ……気持ちよかったですか?」

「もちろん、気持ちよかったよ。志乃君が一番好きだよ。また来てもいいかな?」

「ぜひ来てください。待ってますから」

「ありがとう、じゃあね」

「こちらこそ、ありがとうございました。」


セックスをした後はたくさん褒められる。
俺は満足そうな顔をしている男を見送った後、部屋にゴロンっと横になった。
少し体を拭いておこう。

俺は一応来た服を脱いで、近くにあるお絞りを手に取る。
そして、少し気になる部分を拭いていく。


そうこうしていたら、携帯が光っているのが目に見えて、俺は思わず携帯に手を伸ばした。
誰から来ているのかはだいたい予想がついている。

携帯を見ると、やっぱりそうだった。


『ハル』と表示されて『Eメールが一件届いています』と表示されている。

ハルには正直申し訳ない事をしてしまったと思っている。
あれは俺がただ先走って誤解しただけだ。
ハルにそんなつもりがないのはわかっていた。
少し考えればわかるはずなのに、いつもと同じように切り返してしまったいた。

途中でそれに気づいてはいたけど、そこで俺も謝ることができず、そのまま突っぱねてしまった。


「はぁ……」


俺は歌って、と言われるのが嫌いだ。
大嫌いだ。

それは歌が嫌いなのではなく、今この状況でという条件が重なるからだ。

いっそのこと、「歌が嫌い」と言ってしまうほどに嫌いだ。