1 「志乃君ありがとう。」 「こちらこそ……気持ちよかったですか?」 「もちろん、気持ちよかったよ。志乃君が一番好きだよ。また来てもいいかな?」 「ぜひ来てください。待ってますから」 「ありがとう、じゃあね」 「こちらこそ、ありがとうございました。」 セックスをした後はたくさん褒められる。 俺は満足そうな顔をしている男を見送った後、部屋にゴロンっと横になった。 少し体を拭いておこう。 俺は一応来た服を脱いで、近くにあるお絞りを手に取る。 そして、少し気になる部分を拭いていく。 そうこうしていたら、携帯が光っているのが目に見えて、俺は思わず携帯に手を伸ばした。 誰から来ているのかはだいたい予想がついている。 携帯を見ると、やっぱりそうだった。 『ハル』と表示されて『Eメールが一件届いています』と表示されている。 ハルには正直申し訳ない事をしてしまったと思っている。 あれは俺がただ先走って誤解しただけだ。 ハルにそんなつもりがないのはわかっていた。 少し考えればわかるはずなのに、いつもと同じように切り返してしまったいた。 途中でそれに気づいてはいたけど、そこで俺も謝ることができず、そのまま突っぱねてしまった。 「はぁ……」 俺は歌って、と言われるのが嫌いだ。 大嫌いだ。 それは歌が嫌いなのではなく、今この状況でという条件が重なるからだ。 いっそのこと、「歌が嫌い」と言ってしまうほどに嫌いだ。 |