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でも、隼也が直接言ってきているわけじゃないから、俺も変なことは言えない。
まだそうと決まったわけじゃないし……。


「か、帰るよ」

「早川さん」

「な、なに……。」


俺はドアの方に歩いていく。
なんとなく、早く出なくちゃと思った。
けれど、隼也に腕をつかまれて俺の動きは阻まれてしまう。

隼也が俺を見つめて、言いにくそうに吃る。

なんだ、その……初めての告白をする中学生みたいな反応は!

そんな顔されると振り払えなくなる。
どうしていいかわからなくなる。
あんな話を聞いてしまった手前、俺だけでもこいつに優しくしてやりたいとか思ってしまってる。


「泊まって、行きません?」

「行くわけ、ないだろ」

「どうしてですか?ここから帰るの時間かかるし……疲れてるでしょ?」

「…こういう時だけそういう事言う……お前のお兄さんと話をするのは仕事よりも疲れるよ」

「だから休んで……」

「車もう空いてるから平気だよ。」

「そんなに、帰りたいですか?」


当たり前だろ。そう思う。
だってさっきからそう言ってる。
それなのに隼也は、俺の腕を離そうとしない。


「疲れてるんなら今日はここで休んで、明日ここから仕事に行けばいいじゃないですか……聞きましたよ?車運転するのってかなり疲れるって」

「でも、ここに居るのは気を使う」

「俺の部屋に居たらいいです。そしたら、気を使わないでしょ」

「そういう問題じゃないんだよ……」


俺はあの手この手を使って、なんとか家に帰りたいと隼也にアピールする。
しかし、隼也もあの手この手を使って、ここにいて欲しいと主張してくる。

これじゃあシーソーゲームだ。


「帰って欲しくないんです。俺、もっと一緒に居たいんです」