4 でも、隼也が直接言ってきているわけじゃないから、俺も変なことは言えない。 まだそうと決まったわけじゃないし……。 「か、帰るよ」 「早川さん」 「な、なに……。」 俺はドアの方に歩いていく。 なんとなく、早く出なくちゃと思った。 けれど、隼也に腕をつかまれて俺の動きは阻まれてしまう。 隼也が俺を見つめて、言いにくそうに吃る。 なんだ、その……初めての告白をする中学生みたいな反応は! そんな顔されると振り払えなくなる。 どうしていいかわからなくなる。 あんな話を聞いてしまった手前、俺だけでもこいつに優しくしてやりたいとか思ってしまってる。 「泊まって、行きません?」 「行くわけ、ないだろ」 「どうしてですか?ここから帰るの時間かかるし……疲れてるでしょ?」 「…こういう時だけそういう事言う……お前のお兄さんと話をするのは仕事よりも疲れるよ」 「だから休んで……」 「車もう空いてるから平気だよ。」 「そんなに、帰りたいですか?」 当たり前だろ。そう思う。 だってさっきからそう言ってる。 それなのに隼也は、俺の腕を離そうとしない。 「疲れてるんなら今日はここで休んで、明日ここから仕事に行けばいいじゃないですか……聞きましたよ?車運転するのってかなり疲れるって」 「でも、ここに居るのは気を使う」 「俺の部屋に居たらいいです。そしたら、気を使わないでしょ」 「そういう問題じゃないんだよ……」 俺はあの手この手を使って、なんとか家に帰りたいと隼也にアピールする。 しかし、隼也もあの手この手を使って、ここにいて欲しいと主張してくる。 これじゃあシーソーゲームだ。 「帰って欲しくないんです。俺、もっと一緒に居たいんです」 |