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「早川さん、俺が死んだら悲しみます?」

「あぁ、悲しむよ。しばらく慣れられないだろうな」

「でもいつか慣れるんだ……世知辛い……」

「人間、どんな環境でも順応していくんだよ」

「そんな順応機能欲しくないっすね……」


隼也が俺に撫でられると心地よさそうな顔をする。
そんな隼也をみて、話して少しは楽になったかな、と、独り善がりな自己満足に浸ってみる。


「俺、死んだら早川さんにずっと覚えててもらいたいっす」

「そりゃ覚えてるよ。義兄さんの弟だし、仕事もいっぱい一緒にしたし。」

「もっと強い繋がりで」

「ん?」


今なんか変な事言わなかったか?
そう思ったけど、隼也はケロッとしてこっちを見てすらいなかった。
俺は小さく首を傾げると、隼也の頭から手を離した。
そしてゆっくりと立ち上がる。
すると隼也が不思議そうな顔をして俺を見上げた。


「そろそろ帰ろうかな。」

「え?」

「そりゃ帰るだろ。明日も仕事だし」

「そ、そうっすよね……」


腕時計を見たら、もう10時を過ぎそうだった。
予定にはなかったけど、ここに居過ぎてしまったらしい。

ぐっと伸びをして、部屋を見渡す。

奥の方を見ると少し乱れたベッドがあった。
その隣にあるのはローテーブル……の上に乱雑においてあるCD……。
遠くから見てもわかる、あれ、ブルーバスターのCDだ。

……。

志乃さん。


俺は思わずそれを見て思い出すと、携帯を手に取った。
連絡なんてきてるわけない。
どうやって連絡しよう。


「はぁ……」


思わずため息が出る。


「早川さん、なにか飲み物飲みます?」

「あぁ、いいよ。さっきコーヒー飲んできたから」

「そうですか。じゃあ……えっと、どこか……座ってください。」