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『誰も悲しまない』

俺にはなぜそこまで思考が飛んだのかよくわからなかったけど、もう一度考えて見ればわかることだった。

確かに、そう思ってしまうのは仕方ない気がする。実際あの三人は隼也が事故かなにかに遭った時、悲しむのだろうか。

嫌いというより、無関心。

隼也がなかなか可愛がられて育ってないことはわかった。
けれどそれは、両親にというだけで、普通に愛は貰って育っている。
やはり、親の愛というのは大事なんだろうか。

……隼也が楢崎家の次男というのも理由なのかもしれない。
普通の家庭とは違うからこそ、感じるなにかがあるのかもしれない。

俺はなんと声をかけたらいいのか迷って、そんなことを考えてから、隼也の近くに行った。


「隼也」

「変なこと、言ってすんません」

「別に……でもそれはきっと曲解し過ぎだよ」

「ふ、だんは、泣いたりとか、しないんすよ?早川さんが、優しいから……」

「優しいかなぁ」


目をごしっと擦る姿が、年相応だ。
隼也は「あー……もう」と言いながら、顔を扇いでいる。
俺はそんな隼也の頭を優しく撫でた。


「明日いなくなったって誰も気づかないことはないよ。俺だって隼也が居なくなったら気付く。」

「でも、早川さん俺のこと嫌いでしょ」


赤くなった目が、俺を見つめる。
嫌い……。

まぁ、あんな態度とってたらそりゃ伝わるよな……なんて思う。

でも、そういう……重い嫌いじゃなくてうっとおしい、ぐらいの嫌い。


「嫌いっていうか、俺は仕事を邪魔されるから嫌なだけで、お前のこと自体そんなに嫌いじゃないよ……多分」

「なんでそこ多分付くんすか」

「だって嫌いなら、お前とこうやって話したりしないはずだろ?」

「……そう、っすけど……」


むしろなぜ俺は、嫌っていると認知して、家族ら嫌われてないと認知しているんだろう。
やっぱり、優しいところもあるんだろうか。

隼也を見ていると、人間外面だけじゃわからないなぁと感じる。


「いつでも話聞くから」

「はい。」


けれど、なぜああも頑なに、仕事関係のことを教えようとしないのか、それは謎に包まれたままだ。