7 『誰も悲しまない』 俺にはなぜそこまで思考が飛んだのかよくわからなかったけど、もう一度考えて見ればわかることだった。 確かに、そう思ってしまうのは仕方ない気がする。実際あの三人は隼也が事故かなにかに遭った時、悲しむのだろうか。 嫌いというより、無関心。 隼也がなかなか可愛がられて育ってないことはわかった。 けれどそれは、両親にというだけで、普通に愛は貰って育っている。 やはり、親の愛というのは大事なんだろうか。 ……隼也が楢崎家の次男というのも理由なのかもしれない。 普通の家庭とは違うからこそ、感じるなにかがあるのかもしれない。 俺はなんと声をかけたらいいのか迷って、そんなことを考えてから、隼也の近くに行った。 「隼也」 「変なこと、言ってすんません」 「別に……でもそれはきっと曲解し過ぎだよ」 「ふ、だんは、泣いたりとか、しないんすよ?早川さんが、優しいから……」 「優しいかなぁ」 目をごしっと擦る姿が、年相応だ。 隼也は「あー……もう」と言いながら、顔を扇いでいる。 俺はそんな隼也の頭を優しく撫でた。 「明日いなくなったって誰も気づかないことはないよ。俺だって隼也が居なくなったら気付く。」 「でも、早川さん俺のこと嫌いでしょ」 赤くなった目が、俺を見つめる。 嫌い……。 まぁ、あんな態度とってたらそりゃ伝わるよな……なんて思う。 でも、そういう……重い嫌いじゃなくてうっとおしい、ぐらいの嫌い。 「嫌いっていうか、俺は仕事を邪魔されるから嫌なだけで、お前のこと自体そんなに嫌いじゃないよ……多分」 「なんでそこ多分付くんすか」 「だって嫌いなら、お前とこうやって話したりしないはずだろ?」 「……そう、っすけど……」 むしろなぜ俺は、嫌っていると認知して、家族ら嫌われてないと認知しているんだろう。 やっぱり、優しいところもあるんだろうか。 隼也を見ていると、人間外面だけじゃわからないなぁと感じる。 「いつでも話聞くから」 「はい。」 けれど、なぜああも頑なに、仕事関係のことを教えようとしないのか、それは謎に包まれたままだ。 |