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早川さんは俺のことが嫌いだ。
多分、これは自意識過剰じゃない。

話しかけるといつも鬱陶しそうな顔をされるし、他の人と話す時よりもトーンが低い。

俺は家で嫌われてはないけど、ほぼ嫌われているみたいなものだから、そういうところには敏感だ。
だからすぐにわかる。

早川さんが隠すことを苦手としてるっていうところもあるんだろうけど。

だけど、話しかけたら鬱陶しそうにしながらも、こういうふうにきちんと話してくれるし、こうやって優しくもしてくれる。

早川さんは優しい。

ずるいほど、優しい。

だって普通嫌いなやつを家に連れて帰らないでしょ。
親戚だから?
きっと、親戚じゃなくてもこうしてもらってる。


やさしい、優しすぎる。
水飴より、甘い。


「じゃあさぁ、早川さん」

「じゃあってなんだよ……」


俺は新しいことを思いついて、早川さんに提案するべく口を開く。

早川さんは優しすぎて、行けないと思う。
話している間が楽しくて、もしかしたら好き、いや、そこまで行かなくても、普通にはならないかなぁって思ってしまうんだ。

その優しさに漬け入って、淡い期待を抱いてしまう。

ていうか、嫌われる原因は多分俺にあるんだろうと思う。
仕事を邪魔するから?
でも、仕事の時しか話す時ないから……俺早川さんと話したいんだもん……。

でも多分、それだけじゃない。
俺から金をとったら何も無いし。
金を持ってるから、媚びてくる人とかいるけど、金がなかったら本当に魅力のない男。

早川さんは俺の金になんか興味無いから、俺と付き合うメリットをきっとどこにも感じられないんだ。
だから、俺と話している時間も一緒に居る時間も全部無駄なんだ。


「うち寄って帰ってくださいよ」

「なんで……」

「ほら、言ったじゃないですか、早川さんのお姉さん、早川さんに会いたがってたって」


なかなか車は進まない。
別に俺はそれでも良かった。
進まなければ進まないほど、早川さんと一緒にいられるから。


「体調悪いそうだから早く帰れって言ってたのは誰だよ……」

「だって早川さん、体調悪いわけじゃないっていうし、そのくらいいいでしょ?」

「……はぁ。」

「俺ん家来ないなら俺、早川さん家についてって、早川さんの看病しますね」

「本当にお前は悪知恵が働くやつだな……」

「あはは!褒められてる?」