1 「早川さん今日車なんだ……」 「昼だから空いてたしね。でも今の時間すごく渋滞だよ。大丈夫?」 「何がですか?」 会社の駐車場に停めている早川さんの車。 俺は後部座席に乗り込もうと突っ立ってみる。 ん?開かない。 ……、あ。 普通後部座席じゃなくて、隣だよな? タクシーでもうちのクルマでもないんだし……ドアも勝手に開かないか。 「俺そんなに運転上手くないし、長い時間乗ったら疲れるかも。後ろ乗りなよ」 「え?」 「待って、開けるから」 早川さんは、そんな俺に気づいたのか、俺が立っていた方に回ってくると、そのままドアを開けた。 隣座ろうと思ったのに、こんなことをされたらここに乗るしかない。 「すんません」 車に乗り込む。 暗くてよくわからないけど、きっと彼らしい車内なんだろうなぁと思う。 なんだろう、なんか、早川さんと二人だったら調子が狂うな。 「なにが?運転下手だったらごめんね」 「なんなんすか早川さん今日……嫌味っすか……」 「なんの話だろう」 早川さんが、車に乗り込む。 運転が、下手だなんて、そんなことないだろうに。 そう思いながら一瞬目を伏せた。 ドアが開いて、早川さんが車に乗り込む感覚がする。 早川さんがキーを差し込むと、車のスピーカーからは、男の人の声が聞こえてきた。 どうやら今からの天気を伝えているようだ。 |