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「早川さん今日車なんだ……」

「昼だから空いてたしね。でも今の時間すごく渋滞だよ。大丈夫?」

「何がですか?」


会社の駐車場に停めている早川さんの車。
俺は後部座席に乗り込もうと突っ立ってみる。

ん?開かない。
……、あ。

普通後部座席じゃなくて、隣だよな?
タクシーでもうちのクルマでもないんだし……ドアも勝手に開かないか。


「俺そんなに運転上手くないし、長い時間乗ったら疲れるかも。後ろ乗りなよ」

「え?」

「待って、開けるから」


早川さんは、そんな俺に気づいたのか、俺が立っていた方に回ってくると、そのままドアを開けた。
隣座ろうと思ったのに、こんなことをされたらここに乗るしかない。


「すんません」


車に乗り込む。
暗くてよくわからないけど、きっと彼らしい車内なんだろうなぁと思う。
なんだろう、なんか、早川さんと二人だったら調子が狂うな。


「なにが?運転下手だったらごめんね」

「なんなんすか早川さん今日……嫌味っすか……」

「なんの話だろう」


早川さんが、車に乗り込む。
運転が、下手だなんて、そんなことないだろうに。
そう思いながら一瞬目を伏せた。
ドアが開いて、早川さんが車に乗り込む感覚がする。
早川さんがキーを差し込むと、車のスピーカーからは、男の人の声が聞こえてきた。
どうやら今からの天気を伝えているようだ。