6





「し、志乃さん……?」


俺は恐る恐る声を掛けた。
まずいことをしてしまったとは思っている、だけどなぜそこまで怒鳴られることなのか、俺はまだわかってなかった。

路肩に車を止める。

違う意味で心臓がドキドキ言って、体温が下がっていく気がする。


「俺そういうヤツいっちばん嫌いなんだよ。俺はもう『BLUE BUSTER』の『shino』じゃねぇんだよ。」

「俺はそういう意味で」

「言った。そういう意味だ!!何が歌って、だ。人のこと馬鹿にすんのも大概にしろよ!!そんな簡単に歌うほど俺は安くねぇんだよ!!」

「違う!!違うよ志乃さん!!」


そんなつもりないのに。
そんなつもりないのに!!

志乃さんは本当に軽蔑したような目で俺を見る。
違うって弁解しないと。
弁解しないといけない。

俺はそんなつもりで言ったんじゃないのに。
そんな馬鹿にするつもりで、そんなつもりで!!

違う!!

志乃さんの肩を掴む。
けど、志乃さんは俺の手を払うと、涙を溜めた目で俺を睨んだ。


「ブルーバスターの解散した理由?それ聞いてどうするつもりだって言うんだよ?馬鹿にするつもりかよ?どうして解散に追い込まれたか知ってるくせに!!俺の口からそんなに聞きてぇかよ!!」

「志乃さん!!」

「帰る」

「待ってよ!!違う、違うんだ!志乃さんを傷つけたことは謝る!謝るけど俺は――!!」


無理矢理志乃さんの肩をつかんで、口を開けた時ダッシュボードに置いていた携帯が震える。

二人でそれを見て、俺は無視しようと思った。
けれど、志乃さんはそれを取ると通話ボタンを押して俺に押し付けてきた。


『小早川?』

「っ、部長……?」


こんな時に!こんな時に!!


「後じゃダメですか!?」

『なんだ、今何してる?体調不良だろ?』

「〜〜〜っ!!なんですか?!」


志乃さんは電話を切れない俺をいいことに、俺の手を振りほどくと車のドアを開けた。
志乃さん、待って、志乃さん!!


「し、!!!」

『どうした?』

「っ!!!」