5 「あ?」 お昼時だからか、少し車が多い。 窓を開けたせいで外に音が流れてしまってよく聞こえないから、俺はBGMの音を少し大きくした。 「歌わないのかなぁって。なんでブルーバスターって、解散したんですか?」 俺ずっと気になってたんですよね。 突然解散して、理由とか全然発表しなかったじゃないですか。 そう続けて俺は、青になった信号を見るとそのまま交差点を突っ切る。 「知らねぇ」 俺はいつもの志乃さんと同じ声音だと思っていた。 ここで気づけばよかったのに気づけなかった。 まためんどくさがって、返事を適当にしているんだと、そう思っていた。 志乃さんは、普通に話はめんどくさがらずにしていたことを忘れて。 「知らないって!またまたぁ!志乃さんブルーバスターの張本人じゃないですか!言えないようなことなんですか?」 「お前に話す必要ねーだろ」 「まぁたしかに、そうかもしれませんけど!結構気になるもんなんですよ?俺としては!」 テンションが上がって、先のことまで考えられなかった。 運転中でよそ見ができなくて、志乃さんの顔を見られなかった。 「ふぅん。」 素っ気ない小さな返事が聞こえて、俺はそのまま返事はもらえないかぁ、なんて諦める。 「もう歌わないんですか?」 「は?」 「俺、志乃さんの歌好きだから。もう一回聞きたいなぁ、なんて。」 深いことは考えてない。 本当に素直にそう思った。 そう思って、俺は上機嫌のままに続ける。 「やだよ」 「減るもんじゃないんだし、いいじゃないですか!聞きたいなぁ俺。ここでちょっと歌ってみたりとか……」 「しつけぇな!!!嫌だっつってんだよ!!」 突然怒鳴り声が聞こえて、俺の体が跳ねる。 なぜ怒鳴られたのか、一瞬自分に向けられたんじゃないと思った。 BGMが、小さく聞こえて、志乃さんのはぁはぁと荒く息をする音が鮮明に聞こえた。 |