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「あ?」


お昼時だからか、少し車が多い。
窓を開けたせいで外に音が流れてしまってよく聞こえないから、俺はBGMの音を少し大きくした。


「歌わないのかなぁって。なんでブルーバスターって、解散したんですか?」


俺ずっと気になってたんですよね。
突然解散して、理由とか全然発表しなかったじゃないですか。
そう続けて俺は、青になった信号を見るとそのまま交差点を突っ切る。


「知らねぇ」


俺はいつもの志乃さんと同じ声音だと思っていた。
ここで気づけばよかったのに気づけなかった。
まためんどくさがって、返事を適当にしているんだと、そう思っていた。
志乃さんは、普通に話はめんどくさがらずにしていたことを忘れて。


「知らないって!またまたぁ!志乃さんブルーバスターの張本人じゃないですか!言えないようなことなんですか?」

「お前に話す必要ねーだろ」

「まぁたしかに、そうかもしれませんけど!結構気になるもんなんですよ?俺としては!」


テンションが上がって、先のことまで考えられなかった。
運転中でよそ見ができなくて、志乃さんの顔を見られなかった。


「ふぅん。」


素っ気ない小さな返事が聞こえて、俺はそのまま返事はもらえないかぁ、なんて諦める。


「もう歌わないんですか?」

「は?」

「俺、志乃さんの歌好きだから。もう一回聞きたいなぁ、なんて。」


深いことは考えてない。
本当に素直にそう思った。
そう思って、俺は上機嫌のままに続ける。


「やだよ」

「減るもんじゃないんだし、いいじゃないですか!聞きたいなぁ俺。ここでちょっと歌ってみたりとか……」

「しつけぇな!!!嫌だっつってんだよ!!」


突然怒鳴り声が聞こえて、俺の体が跳ねる。
なぜ怒鳴られたのか、一瞬自分に向けられたんじゃないと思った。

BGMが、小さく聞こえて、志乃さんのはぁはぁと荒く息をする音が鮮明に聞こえた。