4 暫く重なったまま息をしていたら、志乃さんが重いと言ったので俺は上から退けた。 浅く息を繰り返している志乃さんは、まだ少し快感が体に残っているようで、時々軽く震えている。 「大丈夫ですか?……志乃さん……」 「ん、大丈夫……。それよりティッシュ。ティッシュねーの?」 「あ、あります。」 「貸せ」 うなじから耳まで真っ赤だ。 興奮のせいで赤く染まった肌を見ながら、俺は志乃さんにティッシュを渡した。 「志乃さん、お腹すきました?」 「腹ァ……?……そんなに?」 「そうですか。じゃあその辺ドライブでもします?」 「んー……そうだなぁ。」 体を軽く拭いた志乃さんが、服を着終わるのをみて、俺は車にエンジンをかけた。 するとすぐ様掛かるブルーバスターの曲。 これは『velvet rose』だ。 チラリと志乃さんの方を見たけど、志乃さんは何も気にしてないようで、きっちりシートベルトを締めると、窓の外を見ていた。 「窓開けましょうか?」 「あー、臭いこもってるしな」 「え、うそ」 「まじまじ、開けとけ開けとけ」 耳から入ってくる声が二つとも同一人物。 それにこの声の人と俺はさっき……。 俺はさっきの志乃さんの顔を思い出して、一人気恥ずかしくなってしまう。 記憶をもう一度塗り替えられたからこそ、強く感じてしまうこの感覚。 ここに来る時とは全然違う感覚に、俺はすごくドキドキしている。 窓を開けて、入ってくる風が冷たくて気持ちいい。 火照った顔を滑っていく潮風。 俺は気を紛らわすために、何の気なしに志乃さんに訪ねた。 「志乃さん」 「ん?」 「志乃さんはもう、歌わないんですか?」 |