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暫く重なったまま息をしていたら、志乃さんが重いと言ったので俺は上から退けた。
浅く息を繰り返している志乃さんは、まだ少し快感が体に残っているようで、時々軽く震えている。


「大丈夫ですか?……志乃さん……」

「ん、大丈夫……。それよりティッシュ。ティッシュねーの?」

「あ、あります。」

「貸せ」


うなじから耳まで真っ赤だ。
興奮のせいで赤く染まった肌を見ながら、俺は志乃さんにティッシュを渡した。


「志乃さん、お腹すきました?」

「腹ァ……?……そんなに?」

「そうですか。じゃあその辺ドライブでもします?」

「んー……そうだなぁ。」


体を軽く拭いた志乃さんが、服を着終わるのをみて、俺は車にエンジンをかけた。
するとすぐ様掛かるブルーバスターの曲。
これは『velvet rose』だ。

チラリと志乃さんの方を見たけど、志乃さんは何も気にしてないようで、きっちりシートベルトを締めると、窓の外を見ていた。


「窓開けましょうか?」

「あー、臭いこもってるしな」

「え、うそ」

「まじまじ、開けとけ開けとけ」


耳から入ってくる声が二つとも同一人物。
それにこの声の人と俺はさっき……。
俺はさっきの志乃さんの顔を思い出して、一人気恥ずかしくなってしまう。
記憶をもう一度塗り替えられたからこそ、強く感じてしまうこの感覚。
ここに来る時とは全然違う感覚に、俺はすごくドキドキしている。

窓を開けて、入ってくる風が冷たくて気持ちいい。
火照った顔を滑っていく潮風。

俺は気を紛らわすために、何の気なしに志乃さんに訪ねた。


「志乃さん」

「ん?」

「志乃さんはもう、歌わないんですか?」