6 「んぁーーー、着いた!」 「本当だ。海だ」 途中で買った煙草をくわえながら、俺は窓から見える海を見た。 青くて、キラキラ光っている。 海は前に見た海と相変わらず変わっていないようだった。 穏やかに揺れて、付近には鳥も飛んでいる。 昨晩雨が降ったからか、砂浜は濡れていて、砂浜がカラカラな時に見るのもまた綺麗なのだろうと思う。 ハルをみたら、ハルは疲れたのかハンドルにもたれて俺を見つめていた。 「海、好きなんですか?」 「好きっていうか、見てるとすげえなって思う」 「すごい?」 「なんかわかんねーけど。なんかなぁ。壮大っつうか……」 「志乃さんってもしかして馬鹿……」 「てめぇ歯ァ食いしばれ」 「ごめん!ごめんなさい!!」 律儀な俺は、車から降りてさっき買ったライターで咥えていた煙草に火を付けた。 銘柄には特にこだわりはない。 だから、目に付いたものを選ぶ。 だいたい5ミリ付近を吸っているはずだけど、たまにすげー軽いのやすげー重いのを吸って、 1人で顰め面したり噎せたりしてる。 「煙草おいしいんですか?」 車から降りてきたハルが、俺の隣に立って俺を覗き込んだ。 暗いところでしか見なかったから、分かんなかったけどこいつ意外と髪が細い。 さらさらして、それなのに色は濃い。 染めてんのか? 「美味しい……っていうかなぁ、もう癖みたいな感じだわ。吸ってねーとなんだか口寂しいし、イライラして吸ったタバコは美味しいと思うなぁ。疲れた後とか」 「へぇ……じゃあ今俺美味しいのかな」 「吸ってみる?」 「え、あー……じゃあ。」 よくわからんメンソール。 キツいからよければ吸って欲しい。 ライターの火を近づけてやる。 「吸って」 「ん、っぐへ!ごほっ、げほっ!!」 「ぶは、あははは!!!」 火がついた瞬間、噎せるハルを見て俺は盛大に笑う。 こうなることはわかってたんだが、これを見るのが醍醐味ってもんだ。 「っに、にが!美味しい……っ?!」 「あはは、これスースーして俺には合わねーや。やるよ」 「吸わない!!」 「もっとけっておら」 煙草をもったまま、わたわたとするハルのポッケに18本入っているタバコの箱を押し入れた。 ハルはなんとも言えない顔をしながら、そのタバコが入ったポッケを上からいじっていた。 |