4





ハルはさっき漁っていたタンスの中から、服を取り出すと俺に差し出した。


「これ、七分袖のロンT。それとこれもクロップドパンツ。腰とか絶対余るからロンTなら隠せるかなって」

「俺の服探してたの?」

「だって志乃さんが昨日着てたやつはまだ洗濯すらしてないし、乾いてないし。そのまま出るわけにもいかないでしょ?だから、これ着てください」


驚いた。
本当にやめるとは思わなかった。
体が弱ってるだけに、それだけで嬉しいけど、本気でキスだけでいいのか、とか思ったりして。
ほんの少し申し訳なくなる。

ここまで待遇良くて、体も金も要求されないなんてここは楽園か。

ぼうっとハルを見つめたら、ハルは「ん?」と目をぱちくりさせた。
そんなハルに「いや」と首を振った俺は、大人しくその服を受け取った。


「オシャレだな」

「それは褒め言葉ですか?」

「半分嫌味」

「デスヨネ……」


ハルは、着替える様子を見たくないのか、食べ終わった食器を持ってキッチンの方へと行ってしまった。


「志乃さん、海へ行くのはいつぶりですか?」

「んー……そうだな、8年?いやもっとか?そのくらいかもしんねぇな」

「……かなり行ってないんですね」

「以外となぁ……」


腕を動かすと背中の筋肉や肩の筋肉が動いて痛い。そんな痛みにこらえながら服を身につけていく。
体格差がはっきりわかるズボンのあまり具合と、七分袖がぴったりな感じに俺は密かにため息を吐いた。


ハルの見立て通り、服は違和感なく着れた。