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BLUE BUSTERのBLUEは海のこと。
海を壊すほど大きなインパクトという意味を込めた名前だった。


「志乃さんやっぱり猫舌だ。」

「うるせぇ、熱すぎる」

「ふっ、ふふ!だってあまりにも可愛いから。そうしてる志乃さん本当に猫みたいだ」

「余計なことしてんじゃねーよ」



お粥が熱くて、口の中で転がしただけで口の中が爛れそうだった。
あれだけ放置していたのにこの熱さはなんなんだろう。


「見んなよ。水もってこい」

「横暴だなぁ。お粥美味しいですか?」

「美味しいよ。美味しいから水」


かっこ悪い姿を見られるのは嫌いだ。
でも、相手にかっこよく映るか映らないかは別で、割と自分がかっこいいと思っているかいないかが重要だったりする。

自分がかっこ悪いと思ってる姿は見せたくない。
だって、恥ずかしいから。
ハルが汲んで来た水を持ってきてくれて、ローテーブルのうえに、コトンと置いた。


「はい、水。氷入れときましたよ」

「氷入れるくらいならお粥こんなに熱くするなよ……」

「それぐらい普通ですよ。ぬるいとまずいでしょ?」

「まずかねーよ、つかこれぜってーあちぃから、ほら」

「っんぐ?!」


スプーンで掬ったお粥を軽く開いたハルの口の中に押し込む。
するとハルは少し驚いた顔をしたけど、別に熱くはないようで、軽く首を振った。
そして今度は、俺の頭を押さえるとそのままその口を押し付けてきた。


「ちょ、……ん、ハル」

「……ん、」


ちゅう、と触れた唇が開いて少しだけぬるくなったお粥が流れ込んでくる。
ほんの少しだけ、甘い気がした。


「志乃さんの分だからね」

「これなら……温度がちょうど良くていいかもなぁ……」


口の端についたお粥を親指で拭うと、ハルは「はぁっ」と息を吐いて、俺から目を逸らした。


「……志乃さん、さりげなく俺を喜ばせるのやめて欲しいなぁ……」

「はぁ?」


冷たい水を飲むと、さっきまでの熱さのせいで口の中がその冷たさを余計に拾ってしまうようだった。