5 すると、かすかに鼻の奥に痛みを感じて、次の瞬間にはぼやける視界。 「あ」と思う。 俺、泣いてる。 ぼろ、ぼろ、とわかるように涙が出て、やばいと感じる。 ハルが慌てたように目を見開いて、俺を抱き締めた。 あったかい温度が俺を包んで、もっともっと心臓がくるしくなって、その周りの胸までいっぱいになる。 「どうしたんです?志乃さん。痛い?」 「痛く、ねぇよ。もう……」 「じゃあどうして泣いてるんですか」 あぁくそ、情けねぇ。 バンドを辞めてから、俺は涙腺が緩くなったような気がする。 昔は泣くことなんて無かったのに。 体が小さくて、顔も女っぽいから、昔からよくバカにされてきた。 だから誰よりも男っぽく居たいとおもって、そこら辺は常に気をつけていたのに。 こんなことをし始めて、男に抱かれて男にウケることを探して行ったら、いつの間にかいつよりも自分が女っぽくなってしまった気がする。 抱かれると、女扱いされると、心までオンナになるんだろうか。 「泣かないで、泣かれたら俺、どうしたらいいかわかんなくなるよ」 「ばか、これは欠伸」 「欠伸、ですか。」 苦しすぎるのに、ハルはうんうんと頷いて、俺を撫で続ける。 そんなハルの体にゆっくりと俺は体を預けた。 心地いい体。 伝わってくる体温が俺をじわじわと癒して行く。 あの男が帰って、手城に風呂に入るかと言われた時、俺は首を振ってそのままケータイを持ってそこを飛び出してしまった。 あとでなにか言われるかもしれない。 大雨の中、雨が体を流していくのを感じて、すべて流れた気にはなったけど、何故か無性にハルの優しさが恋しくなった。 とびきり優しくされたい気分だった。 「ハル」 ハルの服を引っ張って、俺がキスをせがんだら、ハルはゆっくりと俺の唇に唇を重ねて、体ごと俺をゆっくりと解放した。 その優しさが、体の奥の奥まで染み渡るようだった。 |