3 どんどん、ライブ会場には空席ができて行った。 街中を歩いていても気づかれなくなったり、笑われたりするようになった。 どんどん、離れていく。 俺を見ていた人が、俺よりもいい人を見つけて離れていく。 量産型。 新しいものを見つけたら食いつくだけで、俺にはなんの才能もない。 俺にはなんの魅力もないんだと。 これがその結果だと、会社にも捨てられた。 いらない。 出て行ってくれ。 お前ともうバンドは続けられない。 じゃあ俺はどうしたら良かった? どうしたら俺は捨てられずに済んだ? やれること全部した。 ボイトレだって時間が許す限りやってた。 なにが、世間は俺の何が気に入らなかった? 中古屋を見た時、俺の出したCD全部定価を切って500円程度で売られているのを見て、俺はすべて壊してしまいたくなった。 捨てられたものも沢山あるんだろう。 そんな安い値段で取引されて、挙句の果てに捨てられて。 胸が引きちぎられる思いだった。 俺の声が、歌が、耳障りとでも言われているようで。 まるで、世間からはじき出されたような感覚。 どんどん世界は俺を忘れていく。 まるでなかったことのようにされていく。 そして、なんかのきっかけで思い出せば、「そういうのもあったね」なんて鼻で笑う。 そこら辺に落ちてる紙切れ同然。 俺はもっと、愛されたい。 俺だけを見て欲しい。 本当は過去の人だなんて扱いを受けたくない。 俺の歌を忘れないで欲しい。 俺のことを忘れないで欲しい。 他の誰よりも俺がいいと、言って欲しい。 俺をもう一度、認めて欲しい。 |