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喉がまだ少し、ひりひりする。
ハルは飯を作りに行くために、キッチンの方に行っていた。

俺はハルのベッドに横になると、ぼんやりと辺りを見回した。

見回してみると、懐かしいものが沢山あるのを見つけて、徐々に記憶が蘇ってくる。
過去から、現在に至るまで。


高校生の時にインディーズでCDを出し始めて、ある時ぽんっと売れた。
それから、そのCDでメジャーデビューをした。

歌番組に出て、生で歌ったり、武道館ライブをしたり。
売れている頃は本当に、本当に楽しかった。

道を歩けないほどの人気具合。
テレビに出れば高視聴率。
ライブをしたら満席。
オリコンチャートは毎回1位。

町中をふらっと歩いたら、俺らの曲が流れまくっていて、気持ちいいと感じた。

俺の大好きな歌が、認められてる!!
その喜びは半端じゃなかったし、日本中が俺らに注目している、その快感は体にこびりついて離れない。
どこに行ってもちやほやされて、VIP待遇。
居心地が良くて、こんな世界もあるんだって初めて感じた。

けど、1年、2年、と年を重ねていくうちに、どんどん世間は飽きてきた。
テレビに呼ばれなくなって、ライブをする会場もどんどんどんどん小さくなっていく。
オリコンチャートにも入れなくなっていって、飛ぶように売れていたCDはどんどん売れなくなる。

盛り上がっていたバンドメンバーも冷めて行って、辞めたいと言い出した。

会社も喜んで出していたお金を惜しみだして、社内ですれ違う若手や売れていく歌手に「人気だったブルーバスター」「声もう出ないんじゃねーの?」「このまま歌っても聞くやつなんかいねーからやめろよ」と、ヤジを飛ばされまくった。

俺ですらそんなに言われていたから、バンドのメンバーもかなり言われてたと思う。

でも俺はもう一度這い上がりたくて、稼いだ金を全部使って自費でライブなんかを開いてた。
CDも最後ら辺は全部自費。

辞めとけば良かったのに、そのまま突っ走って借金を抱えた俺はこのザマだ。

親にも縁を切られて身よりもない。