2 喉がまだ少し、ひりひりする。 ハルは飯を作りに行くために、キッチンの方に行っていた。 俺はハルのベッドに横になると、ぼんやりと辺りを見回した。 見回してみると、懐かしいものが沢山あるのを見つけて、徐々に記憶が蘇ってくる。 過去から、現在に至るまで。 高校生の時にインディーズでCDを出し始めて、ある時ぽんっと売れた。 それから、そのCDでメジャーデビューをした。 歌番組に出て、生で歌ったり、武道館ライブをしたり。 売れている頃は本当に、本当に楽しかった。 道を歩けないほどの人気具合。 テレビに出れば高視聴率。 ライブをしたら満席。 オリコンチャートは毎回1位。 町中をふらっと歩いたら、俺らの曲が流れまくっていて、気持ちいいと感じた。 俺の大好きな歌が、認められてる!! その喜びは半端じゃなかったし、日本中が俺らに注目している、その快感は体にこびりついて離れない。 どこに行ってもちやほやされて、VIP待遇。 居心地が良くて、こんな世界もあるんだって初めて感じた。 けど、1年、2年、と年を重ねていくうちに、どんどん世間は飽きてきた。 テレビに呼ばれなくなって、ライブをする会場もどんどんどんどん小さくなっていく。 オリコンチャートにも入れなくなっていって、飛ぶように売れていたCDはどんどん売れなくなる。 盛り上がっていたバンドメンバーも冷めて行って、辞めたいと言い出した。 会社も喜んで出していたお金を惜しみだして、社内ですれ違う若手や売れていく歌手に「人気だったブルーバスター」「声もう出ないんじゃねーの?」「このまま歌っても聞くやつなんかいねーからやめろよ」と、ヤジを飛ばされまくった。 俺ですらそんなに言われていたから、バンドのメンバーもかなり言われてたと思う。 でも俺はもう一度這い上がりたくて、稼いだ金を全部使って自費でライブなんかを開いてた。 CDも最後ら辺は全部自費。 辞めとけば良かったのに、そのまま突っ走って借金を抱えた俺はこのザマだ。 親にも縁を切られて身よりもない。 |