6 「どう、いう、こと」 「求められたい。俺が、俺がいいって思われたいんだよ。俺じゃなきゃダメだってそうじゃなきゃ嫌なんだ。」 志乃さんが、自分の傷口を撫でて「痛い」と言った。 腫れた頬も、血が滲む頬もすべて痛々しいのに、志乃さんは心まで痛々しかった。 何がそこまで志乃さんを傷つけたのか俺にはわからない。 「……志乃さんは、志乃さんだよ。代わりはいない」 「俺の代わりなんてできるヤツいくらでもいるんだよ。同じ造りしてる人間なんだから」 「そんなことないよ!!」 「じゃあなんで俺は捨てられたんだよ!!!!」 ビリリッと響く声。 有無を言わせない悲痛な叫び声に、俺は思わず息を飲んだ。 志乃さんは下を向いたまま、肩で息をしている。 「すて、られた……?」 「悪い……んでもねぇ」 捨てられた? 志乃さんは一体何に捨てられたんだろう。 問返してみても志乃さんに答えるつもりは無いようだった。 |