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「どう、いう、こと」

「求められたい。俺が、俺がいいって思われたいんだよ。俺じゃなきゃダメだってそうじゃなきゃ嫌なんだ。」


志乃さんが、自分の傷口を撫でて「痛い」と言った。
腫れた頬も、血が滲む頬もすべて痛々しいのに、志乃さんは心まで痛々しかった。
何がそこまで志乃さんを傷つけたのか俺にはわからない。


「……志乃さんは、志乃さんだよ。代わりはいない」

「俺の代わりなんてできるヤツいくらでもいるんだよ。同じ造りしてる人間なんだから」

「そんなことないよ!!」

「じゃあなんで俺は捨てられたんだよ!!!!」


ビリリッと響く声。
有無を言わせない悲痛な叫び声に、俺は思わず息を飲んだ。
志乃さんは下を向いたまま、肩で息をしている。


「すて、られた……?」

「悪い……んでもねぇ」


捨てられた?
志乃さんは一体何に捨てられたんだろう。

問返してみても志乃さんに答えるつもりは無いようだった。