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志乃さんは、今日あったことを話しているようだった。
最初はさっぱりわからなかったけど、聞いていくうちにだんだんとわかってきた。


「手錠されて目隠しされて、イラマされてゲロ吐いてさ。慣らさずに突っ込まれて、イきすぎて意識飛ばしたら顔面思いっきりひっぱたかれて。」


よくみたら志乃さんの頬は腫れていた。
赤くなっているのもわかる。


「ケツから血が出て、血で入口がヌルヌルしてんのわかってすげー気持ち悪くて。そんで、ゲロ吐いたせいで匂いに負けて、また何回か吐いてさ。それで味を占めたのか、締まるからって、喉に指突っ込まれて吐かされて。」

「志乃、さん」

「胃の中空っぽになって吐けなくなったら、飽きたのかしんねーけど、ナイフ持ち出してさ。緩いんだっつって切られて。痛くてほんとどうにかなるかと思った。体力的にも限界来て、また意識飛んで。でも今度は首を切られてから目が覚めて、怖かった。俺もう死ぬと思った」


口調は淡々としているけど、きっとかなり怖いんだと思う。
俺は体験したことがないから、全くわからないけど、ハードコア系のAVを間違えてみた時、こういうのを興奮して見れる人は精神が異常なんだと思った。
俺は興奮なんてできないし、むしろ気分が悪くなるばっかりだった。


「断ればいいじゃないですか。断れないんですか?あなたしかできないみたいな事言ってましたけど、それならその人のしたいことは夢のままでいいんじゃないですか?それとも店の方から何か言われてるんですか?」


俺は早口でまくし立てあげながら、眉を寄せた。
だって、志乃さんがそんなことする理由なんてない。
そんなに苦しいことをする意味がわからない。
断ればいいのに。
俺が思っているよりも深刻な、なにか断れない理由があるんだろうか。
志乃さんを見つめたら、志乃さんは力なく首を振った。


「店には、断ってもいいって言われた」

「じゃあなんで……」


俺のTシャツを志乃さんに渡したら、志乃さんはそれをきゅっと握って俺を見た。


「……俺を見て欲しいから」