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あたりは明るくなっていたけれど、厚い雨雲が空を覆っているせいでまだ辺りのものがはっきりと識別できる程ではなかった。

俺はゆっくりと志乃さんを玄関に降ろした。


「お風呂……入っててください。コンビニで下着とか買ってくるんで」

「いいよ」

「え?」

「下着なんかさ、お前のでいい」

「いやいやそんな」


俺が恥ずかしいし!!
その下着を俺がもう履けないし?!


「いいって、気にすんなよ」

「俺がしますよ!!!だって、いや、いや……だってさ……?」

「いいって。ここに居てくれよ」

「……」


志乃さんが、俺の服を掴んで小さい声で言った。
その体は寒いからかはわからないけど、小刻みに震えている。

どうして今日はそんな様子なんだろう。
何かあったのは確実だ。
でも、こんな志乃さんを見たのは初めてで。

最近ずっと初めての志乃さんを見てばかりだ。
当たり前なんだけど。
当たり前なんだけど……。


「志乃さん」

「ん、ん。」


思わず志乃さんを抱きしめて、頭から背中にかけてを撫でた。
優しく何度か撫でると、志乃さんはゆっくりと俺の背中に手を回して、力を入れてくる。


「お風呂、入りましょっか。まずは温まろう。なにか温かい飲み物作っときますから、お風呂ゆっくり入ってきて下さい。」

「ん……。」


志乃さんの腕を持ってゆっくり引き上げたら、志乃さんはゆっくり歩きながら着いてくる。