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男の人の前に車を止めて、俺はゆっくり窓を開ける。
それに気づいたのか、男の人はゆっくりとこっちを向いた。


「……、志乃さん?!なんであんたこんなとこに立ってんすか!!」

「あ、ハル……はやかったな……」


目が虚ろで、いつもは軽くふわふわしている髪の毛もぺっちゃんこ。
まさかとは思ったけど、悪い予感はあたるもので、雨に曝されて立っていた男の人は志乃さんだった。


「あんたいつから……早く乗って!」

「車で来ると思ってねぇから、びしょびしょだ」

「いいから!」


俺は助手席のドアを開けて、助手席をバンバン叩く。
力なく笑った志乃さんは「いい車乗ってんなぁ」なんていいながら、のろのろと車に入ってきた。


「なんで立ってたんですか!店の中に入ってるとか、それこそ店まで行ったのに!」

「出たら雨降っててよー……びーっくりだぜー俺。」

「あのねぇ?!俺の質問に答えてよ!」

「頭響くから……」

「ごめん……」


俺はよく車の窓を開けっぱなしにして、つぎの日シートを濡らすとかいう馬鹿なことを良くしちゃうから、車の中にタオルのストックがある。
とりあえず俺はそれを志乃さんに押し付けた。


「拭いてください。」

「濡れちゃうもんな。わりぃな」

「そういうことを言ってるんじゃないです。もう……体すごく冷たいじゃないですか。」


志乃さんの首元に触ると、志乃さんの体は冷えきっていた。
俺は車の暖房を入れて、とりあえずアクセルを踏んだ。