4 男の人の前に車を止めて、俺はゆっくり窓を開ける。 それに気づいたのか、男の人はゆっくりとこっちを向いた。 「……、志乃さん?!なんであんたこんなとこに立ってんすか!!」 「あ、ハル……はやかったな……」 目が虚ろで、いつもは軽くふわふわしている髪の毛もぺっちゃんこ。 まさかとは思ったけど、悪い予感はあたるもので、雨に曝されて立っていた男の人は志乃さんだった。 「あんたいつから……早く乗って!」 「車で来ると思ってねぇから、びしょびしょだ」 「いいから!」 俺は助手席のドアを開けて、助手席をバンバン叩く。 力なく笑った志乃さんは「いい車乗ってんなぁ」なんていいながら、のろのろと車に入ってきた。 「なんで立ってたんですか!店の中に入ってるとか、それこそ店まで行ったのに!」 「出たら雨降っててよー……びーっくりだぜー俺。」 「あのねぇ?!俺の質問に答えてよ!」 「頭響くから……」 「ごめん……」 俺はよく車の窓を開けっぱなしにして、つぎの日シートを濡らすとかいう馬鹿なことを良くしちゃうから、車の中にタオルのストックがある。 とりあえず俺はそれを志乃さんに押し付けた。 「拭いてください。」 「濡れちゃうもんな。わりぃな」 「そういうことを言ってるんじゃないです。もう……体すごく冷たいじゃないですか。」 志乃さんの首元に触ると、志乃さんの体は冷えきっていた。 俺は車の暖房を入れて、とりあえずアクセルを踏んだ。 |