2 いっそのこと、1日とか休みとってみたらどうだろうか。 志乃さんに合わせて。 そしたら、あの人の好きな甘いものとやらも食べに行けるし。 普段何をしているのか知らないけど、ちょっと一人じゃ行かないようなところにいったりして。 いや、それはやりすぎか。 気合入れすぎだよな、俺。 俺はあの人と出かけたいと思ってるけど、あの人はただご飯が食べたいと思ってるだけだろうし。 「ただ飯……」 別にいいけどね。 志乃さんが美味しそうに食べてくれるなら、俺はどれだけ志乃さんのご飯代を出してもいいと思うし。 ってこれ、超ダメ男の典型じゃん。 でも、昔から少し貧乏な家庭で育った分、節制する癖がついてるし。 お金だけは沢山貯めてる。 最初の頃は仕送りをしてたけど、姉さんが社長と結婚してからというもの、楢崎財閥がうちの両親の面倒まで見てくれてるから、その必要もなくなった。 そんなことしなくてもいいと言ったのに、「金だけはあるから」なんて言われちゃって。 義兄さんかっこよかったな……。 ゲスい発言でしかないけど。 やっぱ好きな人の面倒って言うのは見てあげたいし、辛い状況にいるなら救ってあげたいと思っちゃうよなぁ。 かといって、俺は志乃さんに何があってあの状況に陥ったのか知らないし、志乃さんがあの職業を嫌いかどうかも知らない。 ただ、痛いのが嫌いとかそういう些細な情報は知ってるけど……。 こんなに志乃さんのこと考えときながら、俺は志乃さんのこと全然知らないんだなぁ……。 |