1 下見調査もしたし、志乃さんを連れていけるな。なんて考えて俺は自室のベットに横になった。 結局あいつはなんだったんだろう。 隼也。 あの後隼也は自分の家にまずタクシーを走らせると、その後俺に万札を渡して「これで帰って」と言ってきた。 受け取れないと言うと、いうことを聞かない子供に向けるような目をして、そのまま俺に万札を握らせると「出して」と言った。 タクシーの扱いが、俺より慣れてた。 明らかに俺より乗ってる。 贅沢な奴。 まぁ、仕方ないか。 その前にも、「お姉さんに会って行ったらいいのに」なんてひと悶着あったけど、なんとなく今の状態では会いたくなくて、遠慮した。 帰り際、隼也は俺をしばらく見つめて何か言いたそうにしていたが、結局いつものように笑うと「じゃあね」と手を振っていた。 不可解すぎる。 俺はあいつのことが嫌いで苦手だけど、最近のアイツを見ていると、実はそこまで嫌いじゃないのかと思ってしまう。 よくわからないから苦手なのは変わらないけど。 俺はスマホに充電器を挿して、メールボックスを開いた。 「連絡、無いなぁ」 広告メールだらけで、目当ての差出人からのメールは無かった。 俺はそのまま画面の証明を落とすと、スマホを脇に投げる。 数日前から志乃さんとの連絡は途絶えていた。 まぁ、もともとそういうのにルーズそうに見えるし、返事が返ってきていた時だって、普通に半日後に返事が返ってくるぐらいだから、仕方ないと思う。 大変そうな仕事だし。 昼夜逆転してるから合わなくても仕方ないのかもしれない。 3日、4日、そのぐらい連絡なくても普通かもしれない。 俺も会いに行けばいいのだけど、なかなかその合間を見つけられないでいた。 いや別に、隼也にすぐ見破られるとか、そんなんじゃない。 |