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下見調査もしたし、志乃さんを連れていけるな。なんて考えて俺は自室のベットに横になった。


結局あいつはなんだったんだろう。

隼也。

あの後隼也は自分の家にまずタクシーを走らせると、その後俺に万札を渡して「これで帰って」と言ってきた。
受け取れないと言うと、いうことを聞かない子供に向けるような目をして、そのまま俺に万札を握らせると「出して」と言った。

タクシーの扱いが、俺より慣れてた。

明らかに俺より乗ってる。
贅沢な奴。
まぁ、仕方ないか。

その前にも、「お姉さんに会って行ったらいいのに」なんてひと悶着あったけど、なんとなく今の状態では会いたくなくて、遠慮した。

帰り際、隼也は俺をしばらく見つめて何か言いたそうにしていたが、結局いつものように笑うと「じゃあね」と手を振っていた。

不可解すぎる。
俺はあいつのことが嫌いで苦手だけど、最近のアイツを見ていると、実はそこまで嫌いじゃないのかと思ってしまう。
よくわからないから苦手なのは変わらないけど。


俺はスマホに充電器を挿して、メールボックスを開いた。


「連絡、無いなぁ」


広告メールだらけで、目当ての差出人からのメールは無かった。
俺はそのまま画面の証明を落とすと、スマホを脇に投げる。

数日前から志乃さんとの連絡は途絶えていた。
まぁ、もともとそういうのにルーズそうに見えるし、返事が返ってきていた時だって、普通に半日後に返事が返ってくるぐらいだから、仕方ないと思う。

大変そうな仕事だし。

昼夜逆転してるから合わなくても仕方ないのかもしれない。
3日、4日、そのぐらい連絡なくても普通かもしれない。

俺も会いに行けばいいのだけど、なかなかその合間を見つけられないでいた。
いや別に、隼也にすぐ見破られるとか、そんなんじゃない。