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客だ。
俺はだらんっとしていた体を起こして、ケータイを隅にやり隠す。
そしてそのまま出入口を見つめて入れば、そこはまもなくして開いた。


「やぁ、こんにちは志乃」

「……こんばんは。」


そこには常連になっている男の人がたっていた。
その男の人は躊躇い無くずんずんと進んできて、俺の頭をごしごしと撫でた。


「1時間、プレミアムね」

「……わかった。できるだけ、期待に添えるように努力すっから」

「敬語」

「あ、あぁ。はい。」

「そう、志乃。君は僕の奴隷だからね」


簡単にメニューを告げられて、俺はぼうっとその人の顔を眺める。

俺の客でハードなSMを嗜む客。

この店で一番高いメニュー……そんなのはどうだっていい。俺はなかなかにプレミアムと言う言葉は嫌いだった。
プレミアムなんて一番高いメニューはなかなかにエグい。
切断や薬漬けこそないものの、割と際どいところまで許す。
1時間、今日はこの人、1時間でどこまですんだろ。


「志乃、好きだよ。こんなことさせてくれるのは君だけだからね」

「そう、ですか。そうですよね、あなたの愛を受け入れられるのは俺しかいませんよ」


この人の相手をした後は、大抵俺は使い物にならない。
この人の予約が入ってるなんて聞いてなかったし、この後の予約も一応無いと聞いているけど、もしかしたら飛び込みでくるかもしれない。

それなのに服を脱がせていつもの拘束グッズをつけようとする目の前の客に、俺は笑みを向けることしかできない。