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「隼也、そろそろ帰ろうよ」


皿の中のものは全て無くなった。
それなのに隼也はちびちびと水を飲んで、まだ食事終わってないアピールをしてくる。


「隼也、明日授業は?」

「明日、は、2限からです」

「そう、課題は?」

「なんでそんなこと聞くんすか?」


グラスの中にある氷が音を立てる。


「そんなの当たり前だろ。心配してるんだ、学生の本分だからな」

「俺は早川さんと違って、金積めば入れる大学っすからねぇ……。早川さんは大学時代たくさん勉強したんすか?」

「……まぁ、それなりだよ。」

「俺なんかより頭いいんだろうなぁ。親御さんにその大学行けって言われたんすか?」

「お前だってそうだろ?」

「まぁ、そうっすけど」


頬杖をついて、ふっと目を逸らす隼也。
何をそんなに不満なことがあるんだろう。
世の中には不満しかない。
みたいな顔して。


「琴音さんが」

「コトネサン?」

「あぁいや、違うっす。」

「なんだよ気になるだろ?」

「早川さんは長男でいいなって話っすよ。大学行ってうち就職してさ」

「俺そんなにお前に上から目線で話される覚えないんだけど」

「でもほんとにそう思うんすよ。いいな」

「どういうこと?」


思わず聞き返したら、こっちを全く見ていなかった隼也がこっちをみて、「こっちの話っすよ」なんていう。
こっちの話ってどっちの話だ。


「帰りましょ。タクシー呼んどきます。あ、ご馳走様でした」

「え?!」


さっきまで帰りたくなさそうだったのに、今度はさっきの腰の重さはなんだったのかというほどにさっと立って。
最近、前からわからなかった隼也がもっとわからない。