3 嬉しいんだけど調子狂うなぁ……。 けど、話しかけていつもの調子に戻られたら困るし。 俺は午前中の仕事に取り掛かるために、スリープ状態になっていたパソコンをまた立ちあげる。 ちらりと振り返ったら、隼也は真面目に書類を読んでいた。 真面目じゃないとは言わない。 仕事はちゃんとするし、ミスもあまりすることがない。 ぺちゃくちゃしゃべる割に完璧だ。 隼也はあの家系に生まれたからか、手際がいいし仕事もよくできる。 将来あいつの部下になるかもしれない。 そうおもっても、安心して任せられるほどの技量はあると思う。 だから、ほんの少しだけ尊敬している。 すごい奴だと思う。 「終わったっすよー。誤字、ここっすねー。変換ミスがあります。あとここ、接続詞抜けてますよ。使ってないパソコンにデータ飛ばしといてくれたら俺が直して印刷しときますよ」 「あぁ、ほんと?ありがとう、助かるよ」 話し終わった隼也は、俺と少し離れたデスクに座って、パソコンを立ちあげる。 慣れた手つきでパソコンを操る仕草に、俺より慣れている感じがしてしまう。 しかし…… あそこまで俺に絡んでこないとなると、すごく調子が狂う。 「隼也」 思わず名前を呼んでしまった。 すると隼也はパソコンから目を離して、俺を見た。 「ん?どうしたんすか?仕事だったら付箋書いて端貼っといてください。見たらするんで」 「あぁいや、そうじゃなくて」 「?」 ?の文字を浮かべて首を傾げる隼也。 そりゃあそうだ。 用もないのに話しかけるなって話だ。 「その仕事終わったらこっち来て」 「?……いいっすけど……」 首を傾げながら、パソコンにまた目を戻す隼也。 いやいやだってさ、俺、隼也の世話係だし!! それに、隼也と一応親戚なわけだし? ほら、何かあったのかもしれないし……。 何かあったら聞いてあげるのが大人だろ? さみしがってるわけじゃない……。 仕方ないだろ……。 調子狂うんだ……。 |