2





「あ、あれ……?」


中に入った俺はびっくりした。
いつもなら、俺のデスクを占領しているはずの隼也が見当たらなかったからだ。


「どうした小早川」

「あぁいえ。隼也が」

「楢崎くんならコピーしてもらってるよ」

「あぁ、あぁ……そうですか」


そういうことか。
部長に言われて、俺はコピー機のほうを見る。
相変わらずこの空間に似合わない金髪が、しゃんと背筋を伸ばしてコピーしていた。

ん?いやでも、仕事最中でもいつも俺に挨拶だけは忘れない隼也が俺に気づかないなんて。


「終わったっすよー。」

「あぁ、ありがとう。今度はこれ、誤字脱字チェックお願いしていいかい?」

「全然!わかりましたー!」


朗らかな声。
軽い物腰。
早めにとか頼まれてるんだろうか。
だから話しかけてこないとか?

隼也を見つめていたら、やっとくるっと振り返ってこっちを見た。
そして、「あ」という顔をして俺の方に来た。


「早川さん!おはようございます」

「え、あー、おはよう」

「なんすか、なんかぼうっとしてますね!なんかあったんすか?」


隼也はいつもと変わらないようだった。
俺の違和感も勘違いだったらしい。


「いや、何もないけど。仕事頼まれてるんだろ。話してないで早くしなよ」

「はは!冷たいなー!わかってますよ!」


と思ったが、隼也はすぐに俺から離れて机に座るとすぐに書類に目を通し始めてしまった。
いつもなら隣のデスクに座って俺にしばらくちょっかいをかけてくるくせに。