4 小早川遥幸。 彼は義姉の弟だ。 キャバクラを出たら、ピンクネオンに彩られた『花びら大回転』の文字。 それをみて、最近の早川さんを思い出した。 風俗嬢に執心の早川さん。 今夜もあの人は風俗に行っているのだろうか。 ぼうっとその文字を眺めていたら、一緒にいる男にぐいっと腕を引かれて我に返る。 「どうしたのさ、隼也くん」 「あぁ、いやぁ……風俗かぁって」 「え?!風俗に手を出す?!」 「知り合いがね。」 「隼也くんは持ってる友達が違う!!」 彼との出会いは、結婚式だった。 兄の結婚式。 兄の希望で大人数でしたくないということから、海外でした結婚式。 結局身内しか結婚式に来なかったんだけど。 そこで初めて、早川さんに会った。 割と整っている容姿に、ちょっとおどおどとした控えめな感じ。 好印象だった。 これから合う機会ができたらどうやっていじめてやろうって思った。 それから会うことはしばらくなかったんだけど……。 俺がバイトをし始めた配属された場所に彼がいた。 会社で働いていたのは知ってたけど、一緒に働き始めたのは偶然に違いない。 ていうか、彼と身内になったのも偶然だし。 身内である彼が、面倒の塊である俺の世話係に任命されたのは言わずもがな。 部長に言われた時のあの顔を、俺は一生忘れない。あの嫌そうな顔。 早川さんは、いつも俺と話すときすごい嫌そうな顔をする。 初めはそういう態度を取られた経験があんまりにも乏しかったから、なんだこいつって思った。 それにあの人は長男。 俺とは違って期待されまくって生きてきた人。 それに、密かに将来有望株、なんて言われちゃって会社の中でも期待されまくってた。 いいなぁって思った。 話をするうちに、早川さんは俺が持ってないものばかり持っていることを知った。 高校生の頃にバンドの追っかけをしたり、彼女とたくさん青春したって話も聞いた。 俺は女の子に興味なかったから、付き合ったことなくて、その話を聞いた時だけ彼女っていいなって思った。 早川さんと話していると、いいなって思うことばっかり。 いつの間にか、この人を手に入れればいいなって思うこと全て手に入るんじゃないかって思った。 ていうか、その人自体がとてもいいものに思えてきてた。 それに、早川さんは嫌そうな顔をしながらもいい人だから結局ちゃんと話してくれる。 俺は知ってる。 俺と話すせいで残業してること。 結局あの人は優しいんだ。 それで、何より俺を一人の人間として見てくれてる気がする。 兄、晃己の弟ではなく、一人の職員。 兄のことを引き合いに出さずに、俺と言う人間を俺だけの価値で見てくれる気がする。 だから早川さんはバイトとしての俺は認めてくれるし、仕事も教えてくれる。 それに、ちゃんとしたら褒めてくれるし、間違えたら叱ってくれる。 いつも嫌々だけど、俺がそれにどれだけ喜びを感じてるのか早川さんは知ってるのかな。 今まで琴音さんしかしてくれなかったことが、ほかの第三者にしてもらえる嬉しさは測りしれなかった。 |