4 視線が集まるライブの快感を思い出して、ひたすらに体が震えそうになる。 息が荒くなりそうになる。 ダメだ、あんまり思い出したら過呼吸になる。 それなのに頭の中には楽しかった頃のライブがまるでいま体験しているかのように蘇ってくる。 「ハル、シようぜ」 「でも志乃さんこのあともあるでしょ?」 「なに、俺とはできないっつうの?」 ハルのそういうところがわからない。 俺に好意を向けてくるくせに、セックスはしたがらない。 いつも遠慮して、なかなかノってこない。 いいんだ、きっかけはブルーバスターのシノだっつって笑いに来た、それでも。 それでも俺は、ブルーバスターのシノはまだ忘れられてねーんだって思うから。 でもさ、やっぱすげーイライラする。 買ったCD全部捨ててんだろ? 曲、一曲も覚えてねぇだろ? 最後のライブなんてさ、50人はいるか入らないかのとこでしたんだぜ。 武道館、東京ドーム、チケットは販売開始1分で売り切れてたのに、みーんな離れていってしまった。 思い出したようにふらっと来て、笑って貶して。 俺は一体なんのために歌ってたんだって。 あの時俺はどうやったら、消えずに済んだんだろう。 離れていくファンをどうやったら捕まえられてたんだろう。 そんなに俺の歌は下手か。 そんなに俺には魅力がないか。 そんなに音が悪かったか。 もうあんな思いはしたくない。 俺を見た人が、自分から興味を無くすその瞬間をもう見たくない。 どうやったら、居なくならないんだろう。 どうやったら繋ぎ留めておけるんだろう。 どうやったらまた見てくれるんだろう俺を。 どうやったら俺の虜になるんだろう。 「そ、んなわけじゃ……」 「俺はお前とシてぇって言ってんの」 ハルを押し倒して、腰の上あたりにどかっと座る。 するとハルは、ぐえっと情けない声を出して俺を見つめた。 お前さぁ、俺に欲情してんじゃん。 もっと欲しがれよ。 がっつけよ。 俺を求めろよ。 そんで俺の魅力に気づけ、気づいてもっともっと溺れろ。 気絶するまで犯して俺を安心させてくれ。 俺はあなたの虜ですっつって。 |